広大な関東平野が広がる関東地方には山岳路線は少ないですが、渓谷美が美しい川の路線や、太平洋の車窓が美しい海の路線が多くあります。また、SL列車がもっとも多く走るエリアでもあります。
この記事では、関東エリアのおすすめ路線や列車、沿線の観光スポットなどを紹介します。
渓谷美や大河の車窓が美しい「川の路線」
川や渓谷の車窓が美しい路線は、関東平野から山間部へと移り変わっていく北関東に集中しています。【ひさの乗り鉄ブログ】がおすすめする関東エリアの「川の路線」を紹介します。
関東ではNo.1の渓谷美! 「わたらせ渓谷鐵道」
関東地方の「川の路線」として、まずおすすめしたいのが、渡良瀬川に沿って走る「わたらせ渓谷鐡道」です。渡良瀬川の渓谷美が素晴らしい路線です。
「わたらせ渓谷鐡道」(わたらせ渓谷線)は、群馬県の桐生駅と栃木県の間藤駅を結ぶ第三セクター路線です。桐生駅から乗車すると、渡良瀬川を遡るように北上します。車窓からはずっと渡良瀬川を眺めることができますが、特に路線の北半分は渓谷美が素晴らしいです。
わたらせ渓谷鐡道を旅するのにおすすめの列車がトロッコ列車です。ディーゼル機関車がトロッコ客車を牽引する「わたらせ渓谷号」と、トロッコ型の気動車「トロッコわっしー号」の2種類のトロッコ列車が運転されています。
初夏~秋の季節の良い時期は、窓のないトロッコ列車で、風を浴びながら渡良瀬川の渓谷美を眺める旅がおすすめです。
わたらせ渓谷鐡道を走るトロッコ列車「トロッコわっしー号」については、以下の記事をご覧ください。沿線の観光スポットとして、「足尾銅山観光」(通洞駅)、古い特急車両を活用した「レストラン清流」(神戸駅)、駅に併設された温泉「水沼駅温泉センター」(水沼駅)、駅からすぐ近くなのに本格的な渓谷「高津戸峡」(大間々駅)なども紹介していますので、ぜひご覧ください。
清流、久慈川に沿って走るローカル線「水郡線」
茨城県の水戸駅と福島県の郡山駅(正確には安積永盛駅)を結ぶ「水郡線」は、清流 久慈川に沿って走る川の路線です。それほど険しいところを走るわけではありませんが、車窓からはゆったりと流れる久慈川を眺めることができます。特に、水戸駅から約1時間の山方宿駅以北は、常に久慈川を眺めることができる区間です。
水郡線の車窓については、以下の記事をご覧ください。
水郡線の全区間、水戸~郡山間を乗りとおすと、たっぷり3時間以上かかりますので、途中下車して観光するのも良いでしょう。おすすめの観光スポットとして、日本三大名瀑の一つに数えられる「袋田の滝」(袋田駅下車)があります。
袋田の滝は、4段になった幅広の滝で、岩肌を滑り落ちる水流がとても美しい滝です。袋田駅からバスで10分弱、徒歩では40分ほどでアクセスできます。滝の周辺には飲食店やお土産屋もたくさんありますので、昼食休憩をとるのも良いでしょう。
袋田の滝の様子や、袋田駅からのアクセスについては、以下の記事をご覧ください。
吾妻川に沿って走り、温泉地が点在する「吾妻線」
吾妻線は、群馬県の渋川駅と大前駅の間、群馬県北部を東西に結ぶJR東日本の路線です。吾妻線は、利根川の支流、吾妻川に沿って線路が敷かれています。吾妻線の南側には榛名山や浅間山、北側には草津白根山があり、その間の渓谷に沿って進んでいきます。車窓からは、常に吾妻川を眺めながらの旅を楽しめます。
吾妻線のもう一つの楽しみが、沿線に点在する温泉です。言わずと知れた草津温泉をはじめ、四万温泉、沢渡温泉、川原湯温泉などの温泉地が点在しています。ぜひ途中下車して温泉を楽しんでみましょう。温泉のハシゴなんかも楽しいですね。
吾妻線の終点「大前駅」は、1日5本しか列車がやってこない関東最果ての駅。駅の周囲には数軒の民家以外は何もありません。「関東の秘境駅」といってもよい大前駅を訪問するのもよいでしょう。ただし、乗ってきた列車でそのまま折り返すことをおすすめします。そうしないと、何時間も、何もない大前駅で列車を待つことになってしまいますので……。
吾妻線の車窓と大前駅の様子については、以下の乗車記をご覧ください。
吾妻川の上流域には吾妻渓谷があります。渓谷美の美しい景勝地ですが、特に紅葉の名所として知られています。紅葉の時期には、吾妻線の岩島駅から吾妻渓谷までシャトルバスが出ていますので、途中下車して紅葉狩りを楽しむことができます。
吾妻渓谷の紅葉ハイキングの様子については、以下の記事をご覧ください。
海のように広い利根川河口付近を走る「鹿島線」
ここまで紹介してきた川の路線とは一味違うのが、千葉県北東部の香取駅と茨城県南東部の鹿島サッカースタジアム駅を結ぶ「鹿島線」です。鹿島線は霞ケ浦や利根川が太平洋に注ぐ河口のすぐ近くを走っており、非常に川幅が広い河川を渡っていきます。
その鹿島線のハイライトが、全長1.2km以上にもなる「北浦橋梁」です。長大な橋を渡る列車の車窓からは、まるで海のように広大な北浦を眺めることができます。
鹿島線の車窓や乗車時の様子については、以下の記事をご覧ください。
広大な太平洋の車窓が素晴らしい「海の路線」
南部を太平洋に接する関東地方は、車窓に太平洋を望む「海の路線」も多くあります。房総半島をぐるっと半周する外房線・内房線、茨城県~福島県の太平洋沿岸を走る常磐線など。ここでは、【ひさの乗り鉄ブログ】がおすすめする関東地方の「海の路線」を紹介します。
房総半島をぐるっと周る「外房線」「内房線」
房総半島の外周をぐるっと一周するように走る外房線(千葉~安房鴨川)と内房線(蘇我~安房鴨川)は、あちこちで車窓から太平洋を望むことができる路線です。車窓いっぱいに太平洋が広がる区間もあり、海を眺めながらの旅を楽しむことができます。
外房線の上総一ノ宮駅と内房線の君津駅の間には、日中時間帯に限り、直通列車が走っています。この直通列車に乗車すれば、約3時間、海の車窓を楽しむことができます。
以下の記事は、外房線~内房線を直通する普通列車に乗車したときの乗車記です。太平洋の車窓も紹介していますので、ぜひご覧ください。
外房線・内房線で太平洋の車窓を楽しんだら、内房線の浜金谷駅から徒歩6~7分ほどのところにある金谷港フェリーターミナルから、東京湾フェリーにも乗船してみましょう。
東京湾フェリーは、内房の金谷港と三浦半島の久里浜港を約40分で結んでいます。乗り鉄の観点で見ると、内房線と横須賀線や京浜急行線をつなぐフェリーです。東京湾に出入りする船舶が行き来する浦賀水道を横切るので、さまざまな国の貨物船などを眺めることができます。夕方の便に乗船すれば、海に沈む夕陽を眺めることもできます。
東京湾フェリーについては、以下の記事をご覧ください。片道の運賃が900円と比較的利用しやすくなっています。
茨城・福島の太平洋岸に沿って走る「常磐線」、ロングラン特急も魅力!
東京都の日暮里駅と宮城県の岩沼駅を結ぶ常磐線は、水戸駅より北側で車窓から太平洋を望むことができます。海が見える区間はそれほど多くはないものの、広大な太平洋を見ることができます。
常磐線で長距離を移動するのであれば、特急「ひたち」が定番です。品川~いわき間には多くの「ひたち」が運転されていますが、1日に3往復だけ品川~仙台間の長距離を走破する「ひたち」があります。走行距離は370km以上、所要時間は4時間半という、いまどき珍しいロングランの在来線特急列車です。
特急「ひたち」仙台行きについては、以下の乗車記をご覧ください。常磐線の車窓もあわせて紹介しています。
常磐線の特急列車「ひたち」「ときわ」の車内の様子や、おすすめの座席、お得なきっぷについては、以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
工業地帯を走る都会の秘境路線、運河と工場夜景が美しい「鶴見線」
少し変わった海の景色を見られる路線として、鶴見~扇町・大川・海芝浦間を結ぶ鶴見線を紹介します。横浜市・川崎市といった人口密集地を走る路線ですが、沿岸の工業地帯を走るため、日中は閑散としています。
そんな鶴見線の終着駅の一つ、海芝浦駅は、京浜運河に面した駅です。駅のすぐ外が事業所の敷地となっているため、関係者以外は駅の外に出ることができない珍しい駅です。
海芝浦駅のホームや、ホームに隣接した公園(改札内)からは、京浜運河や、その奥に広がる東京湾、それに、あちこちに点在する工場を眺めることができます。夕方~夜に訪れれば、工場夜景が美しいのです。
鶴見線については、以下の乗車記をご覧ください。海芝浦駅だけでなく、他にも見どころの多い路線です。
関東に多い「SL列車」と「トロッコ列車」
関東エリアには、いわゆる「観光列車」は多くありません。というのも、観光列車は、もともと地方のローカル線の利用促進、活性化を狙って運転されているものが多いためです。
その一方で、関東にはSL列車やトロッコ列車が多くあります。いずれも運賃+数百円で気軽に乗車できる列車ですので、都心からの日帰り旅行や1泊旅行の際に乗車するのがよいでしょう。
関東で5路線! 日本でもっともSL列車が多い関東地方
関東地方では4社5路線でSL列車が運転されています。週末になるとあちこちでSL列車が運転されるにもかかわらず、ほとんどが満席になるほどの人気です。
- SLぐんまみなかみ(JR東日本、高崎~水上)
- EL/SLぐんまよこかわ(JR東日本、高崎~横川)
- SL大樹(東武鉄道、下今市~鬼怒川温泉・東武日光)
- SLパレオエクスプレス(秩父鉄道、熊谷~三峰口)
- SLもおか(真岡鉄道、下館~茂木)
SL列車に乗りに行く日帰り旅行もいいですし、温泉旅行などのついでに乗車するのも良いでしょう。
いずれの列車も、乗車券にプラス数百円の整理券や指定席券で乗車することができます。ただし、SL列車は基本的に全車指定席で運転されますので、事前に指定席券や整理券などを予約・購入しておくようにしましょう。現在ではすべての列車でインターネットでの予約や購入が可能です。前述のように人気の高い列車ですので、運転日にふらっと乗りに行っても乗れないことが多いです。
関東地方で運転されているSL列車に関しては、以下の記事をご覧ください。最新の運転状況も掲載しています。
都心から気軽に乗りに行ける「トロッコ列車」
関東地方を走るトロッコ列車には、上のほうで紹介したわたらせ渓谷鐡道の「わたらせ渓谷号」「トロッコわっしー号」があります。渡良瀬川の渓谷美を満喫できる素晴らしい列車です。
もう一つ、千葉県の小湊鐡道を走る「房総里山トロッコ」があります。こちらは、東京駅から快速列車で約1時間の五井駅(内房線)から乗車することができる、都心に近いトロッコ列車です。
わたらせ渓谷鐡道のトロッコ列車は渓谷美が特徴ですが、小湊鐡道の「房総里山トロッコ」は田園風景や里山の風景が魅力的なトロッコ列車です。
終点となる養老渓谷駅からは養老渓谷の散策やハイキングが楽しめますし、いすみ鉄道へと乗り継げば、房総半島を横断する旅を楽しむこともできます。
「房総里山トロッコ」については、以下の記事をご覧ください。乗車記に加えて、指定券の予約方法、おすすめのきっぷも紹介しています。
関東エリアの鉄道旅行・乗り鉄におすすめのきっぷ
関東エリアを鉄道で旅行するのに便利でお得なきっぷを紹介します。
都心を中心としたJR線に1日乗り放題!「休日おでかけパス」
東京近郊のJR線に土休日の1日乗り放題になる定番フリーきっぷが「休日おでかけパス」です。フリーエリア内のJR線に乗りに行くときはもちろんのこと、前述のSL列車やトロッコ列車の乗車駅へのアクセスにも利用できます。
おねだんが2,720円(Suica版は2,670円)ですので、往復利用であれば片道1,360円(Suica版は1,340円)以上、JR線に乗るのであればお得になります。
「休日おでかけパス」については、以下の記事でわかりやすく紹介しています。
エリア限定のフリーきっぷ
フリーエリアがおおむね1県程度のフリーきっぷがJR東日本から発売されています。
「ぐんまワンデーパス」は、群馬県内のJR線や東武線、私鉄路線、第三セクター路線などに1日乗り放題となるフリーきっぷです。土休日のみ使えるフリーきっぷが多い中、「ぐんまワンデーパス」は平日も利用できるのがメリットです。2023年度は通年で利用できます。
茨城県内のJR線、私鉄路線、第三セクター路線などに土休日の1日乗り放題となるフリーきっぷが「ときわ路パス」です。期間限定ですが、例年、夏季、秋季、冬季の3回発売されます。JR線だけでなく、真岡鉄道、関東鉄道、鹿島臨海鉄道、ひたちなか海浜鉄道にも乗車できる優れたきっぷです。
千葉県内のJR線に2日間乗り放題となる「サンキュー・ちばフリーパス」は、千葉県内のJR線に加えて、小湊鐡道、いすみ鉄道、銚子電鉄、流鉄流山線などの私鉄路線、それに南房総の観光地周辺の路線バスにも乗車できるきっぷです。例年、秋季(9月~11月頃)にしか発売されませんが、南房総への1泊旅行にぴったりのきっぷです。
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