秩父鉄道が週末を中心に運行するSL列車「SLパレオエクスプレス」。東京から最も近いSLとして、運行開始から35年となる現在でも人気列車となっています。この記事では、「SLパレオエクスプレス」のダイヤや乗車方法、指定席の予約・購入方法、お得なフリーきっぷの情報、筆者が実際に乗車した経験をもとにした繁忙期の混雑状況などについてご紹介します。
「SLパレオエクスプレス」とは?
「SLパレオエクスプレス」は、秩父鉄道が運行するSL列車です。例年、3月~11月の週末を中心に、熊谷~三峰口間で1日1往復運転されています。沿線には、長瀞や秩父などの人気観光地があり、起点駅の熊谷駅が東京から近いこともあって、観光客に人気のSL列車となっています。
「SLパレオエクスプレス」の名称の由来は、2000万年前頃に秩父に生息していた海獣「パレオパラドキシア」です。この時代、海の底にあった秩父では、海の生物の化石が多く産出するそうですが、その中でもパレオパラドキシアはとても珍しいのだそうです。
「SLパレオエクスプレス」はC58形蒸気機関車が牽引するSL列車
秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」を牽引する蒸気機関車は、C58形と呼ばれる形式です。1937年から合計427両が製造されたうちの1両です。
蒸気機関車に、石炭と水を積載するテンダー車が連結された「テンダー式機関車」という形式です。C58形蒸気機関車は、客車も貨車も牽引できるバランスの良い蒸気機関車として製造されました。速度ではC57形の方が上ですし、パラーではD51形のほうが勝りますが、どんな線路でも走れる万能性という点ではC58形は便利な蒸気機関車でした。
「SLパレオエクスプレス」を牽引する「C58形363号機」は、1944年に製造され、主に東北地方で活躍していました。1972年に廃車となり、翌年の1973年から吹上小学校に保存されていましたが、1987年に復活、1988年より「SLパレオエクスプレス」の牽引機として、今まで活躍しています。
「SLパレオエクスプレス」が4両の12系客車を牽引
「SLパレオエクスプレス」には、12系という形式の客車が4両連結されています。2000年にJR東日本より譲受されたもので、2012年に現在の赤茶色系の塗装に変更されています。
車内も外装と同じく赤茶色系に統一されています。通路の両側には4人掛けのボックス席がずらっと並び、昔ながらのSLの旅を楽しむことができます。
古い客車ではありますが、非常によく整備されていて、車内の居住性は良いものになっています。エアコンも装備され、真夏の運転でも快適です。
ボックス席の窓際には小さなテーブルが設置されていて、飲み物やちょっとした食べ物などを置くことができます。通路側にはテーブルはありませんので、できれば窓側の座席を確保したほうがいいでしょう。
「SLパレオエクスプレス」乗車の様子は、以下の乗車記をご覧ください。2023年8月に乗車したときの様子です。
2024年度「SLパレオエクスプレス」の運転情報
2024年度の「SLパレオエクスプレス」の運転情報です。
2024年度の「SLパレオエクスプレス」の運行は3月20日~11月17日の土休日
「SLパレオエクスプレス」は、例年3月~12月の週末を中心に運行していますが、2024年度は3月20日からの運行となります。
【SLパレオエクスプレス 2024年度の運転情報】
- 運転日: 2024年3月20日(水・祝)~11月17日(日)の土休日 を中心に運転
- 運転区間: 秩父鉄道 熊谷駅~三峰口駅 1日1往復運転
- 料金: 乗車区間の乗車券+SL指定席券(1,000円)
詳しくは、秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」のWebサイトをご確認ください。
2024年の「SLパレオエクスプレス」は全車指定席で運転!
SLパレオエクスプレスは、2019年の運転まで指定席と自由席(整理券が必要)がありましたが、2021年度以降は全車指定席での運転となっています。2024年度も同様に全車指定席での運転となります。
秩父鉄道のWebサイトの「秩父鉄道SL予約システム」を利用して、オンラインで指定席を予約・購入後、チケットレスでの乗車という流れになります。
「SLパレオエクスプレス」のSL指定席券の予約・購入方法については、こちらにまとめていますので、ぜひご覧ください。
2024年の「SLパレオエクスプレス」の運転日・運転時刻
SLパレオエクスプレスは臨時列車として運転されているため、乗車したい日に運転されているかを事前に確認しましょう。例年、3月~11月の土日・祝日を中心に運転されます。さらに、夏休みなどの観光シーズンには、平日の運転日(主に金曜日)も一部設定されています。
「SLパレオエクスプレス」の運転時刻(2024年3月~)
「SLパレオエクスプレス」の2024年の運転時刻、停車駅は以下のとおりです。
- | ↓下り | ↑上り |
---|---|---|
熊谷 | 10:15発 | 16:20着 |
ふかや花園 |
10:42着 10:43発 |
15:53発 15:52着 |
寄居 |
10:55着 11:07発 |
15:41発 15:37着 |
長瀞 |
11:33着 11:42発 |
15:13発 15:07着 |
皆野 |
11:54着 11:55発 |
14:57発 14:55着 |
秩父 |
12:12着 12:20発 |
14:39発 14:36着 |
御花畑 |
12:22着 12:24発 |
14:33発 14:31着 |
三峰口 | 12:54着 | 14:05発 |
運転日や運転時刻は、秩父鉄道のWebサイト(SLパレオエクスプレスのページ)をご覧ください。
「SLパレオエクスプレス」指定席券の予約・購入方法は?
SLパレオエクスプレスは、2019年までは指定席と自由席がありましたが、2024年は全車指定席での運転となります。
ここでは、「SLパレオエクスプレス」の指定席券の予約、購入方法をわかりやすく紹介します。
SLパレオエクスプレスの乗車には「SL指定席券」が必要
2024年のSLパレオエクスプレスも、全車指定席での運転となります。そのため、SLパレオエクスプレスに乗車するためには、乗車券のほかに、「SL指定席券」が必要となります。
- SL指定席券: 1,100円(大人・小児同額)
- SL予約システムで予約・決済した場合は1,000円
SL指定席券は1,100円ですが、後述する「秩父鉄道SL予約システム」で事前購入した場合には1,000円となります。
繁忙期には指定席券が売り切れる可能性もありますし、そうでなくても好みの座席を予約したい場合には、事前に「秩父鉄道SL予約システム」で購入しておくことをおすすめします。
SLパレオエクスプレスの座席は「秩父鉄道SL予約システム」で事前予約・購入
SLパレオエクスプレスの座席は、秩父鉄道のWebサイトにある「秩父鉄道SL予約システム」で事前予約・購入することができます。
予約から購入、乗車までの流れは以下のようになります。
- 「秩父鉄道SL予約システム」で事前に指定席を予約・購入
- 予約受付は、乗車日の1ヶ月前から出発時間の30分前まで
- 希望の座席を選択可能
- 決済はクレジットカードのみ
- 乗車当日はチケットレスで乗車可能(乗車券は別途必要)
- スマートフォンの画面をすぐに見せられるようにしておく
まずは、乗車を希望する日の座席を、「秩父鉄道SL予約システム」で事前に予約・購入しておくことが重要です。
「秩父鉄道SL予約システム」で予約をするためには、会員登録が必要です。会員登録は簡単にできますので、初めて予約するときに登録すればOKです。
「秩父鉄道SL予約システム」では、指定席を予約する際に、シートマップから希望の座席を選ぶことができます。乗車日、乗車区間、乗車したい列車を選択したあと、下のような画面が表示されますので、希望の座席をタップして選択します。
(出典) 会員専用 秩父鉄道SL予約ページ
なお、「SLパレオエクスプレス」の客車は4両ありますが、号車によって座席番号の順番が異なります。いずれも、ボックスのA席・D席が窓側、B席・C席が通路側というのは共通ですが、進行方向前向きの座席がA・B席になるか、C・D席になるかは、何号車かによって異なります。
上記の「秩父鉄道SL予約システム」では、座席番号の号車による違いもきちんと反映してシートマップが表示されますので、進行方向がどちらかを確認してから座席を選択しましょう。
「SLパレオエクスプレス」の座席の並び順については、秩父鉄道のWebサイトにも掲載されています。(PDFファイルが開きます)
乗車日時、列車、座席を指定したら、あとはクレジットカードで決済しましょう。
SLパレオエクスプレスの指定席の予約・購入については、以下の秩父鉄道のWebサイトもご確認下さい。
乗車当日はチケットレスで乗車可能!
「秩父鉄道SL予約システム」でSL指定席券を購入しておけば、乗車当日はチケットレスで乗車できます。紙の指定席券との引き換えは不要です。「秩父鉄道SL予約システム」で指定席券を購入した際に送られてくるメールを、スマートフォンですぐに出せるようにしておきましょう。
「SLパレオエクスプレス」に乗車するためには、指定席券以外に乗車券が必要ですが、交通系ICカードを利用することができます。
また、乗車券としては、フリーきっぷを利用することもできます。おすすめのフリーきっぷをこちらで紹介していますので、ぜひご覧ください。
「SLパレオエクスプレス」混雑状況、上り列車が比較的空いている
前述のように、SLパレオエクスプレスに乗車するには、SL指定席券を事前に購入しないといけません。全ての座席が売れて満席になってしまうと、その列車には乗車することができなくなります。
SLパレオエクスプレスの運転期間中の繁忙期は、以下のとおりです。
- ゴールデンウィーク(秩父 羊山公園の芝桜が見ごろ)
- 夏休み
- 紅葉の時期(10月下旬~11月中旬)
これらの期間に、SLパレオエクスプレスに乗車しようと考えている場合には、予約受付が開始される1ヶ月前に、「秩父鉄道SL予約システム」で予約をしてしまいましょう。
また、「SLパレオエクスプレス」は、午前中に熊谷駅から三峰口駅への下り列車が、午後には三峰口駅から熊谷駅への上り列車が運転されます。混雑状況は、おおむね以下のとおりです。
- 下り列車(熊谷→三峰口): 観光に良い時間帯での運転のため混雑する傾向
- 上り列車(三峰口→熊谷): 全般的に空いている傾向
空いているほうがよいという場合には、上り列車を狙ってみましょう。
SLパレオエクスプレスは、首都圏に最も近いSLですし、沿線には長瀞や秩父といった観光地もあります。SLに乗車したい人だけでなく、観光地へのアクセスにも利用できる列車ですので、繁忙期には、鉄道ファン・観光客の両方で混雑します。
「SLパレオエクスプレス」の乗車券・おすすめのきっぷ
乗車券とは、列車に乗車するときに必要なふつうの「きっぷ」です。SLパレオエクスプレスに乗車する際にも、前述の 「SL指定席券」のほかに乗車券が必要 です。
SLパレオエクスプレスの乗車券は、普通列車に乗車するときと同じ乗車券を購入すればOKです。駅の窓口や自動券売機で、下車駅までの金額のきっぷを購入するだけです。
また、2022年度から、秩父鉄道でもPASMO等の交通系ICカードが利用できるようになりました。交通系ICカードに乗車区間の運賃分のチャージ残高があれば、改札機にタッチするだけで乗車できます。
通常の乗車券の他に、SL乗車に利用できるフリーきっぷがいくつかありますので、簡単にご紹介します。
秩父鉄道全線に1日乗り放題!「秩父路遊々フリーきっぷ」
- 効力: 秩父鉄道全線を一日乗り降り自由
- 利用可能日: 通年
- 発売金額: 大人 1,500円、小児 500円
- 発売箇所: MaaSアプリ「EMot」限定 → こちらから購入可能
秩父鉄道全線に1日乗り放題となる、最もスタンダードなフリーきっぷです。通年、毎日利用可能なうえに、小児用は500円という安い価格となっています。スマートフォンのアプリから購入できるデジタル版のフリーきっぷです。
なお、熊谷駅から乗車する場合、長瀞駅(片道780円)より先へ往復する場合には「秩父路遊々フリーきっぷ」を購入したほうがおトクになります。
東武鉄道でアクセスする場合には「SAITAMAプラチナルート乗車券」がお得!
- 効力: 東武鉄道・秩父鉄道の以下のフリーエリア内で1日乗り降り自由
- 東武鉄道: 池袋~寄居間、坂戸~越生間
- 秩父鉄道: ふかや花園~寄居~三峰口間
- 利用可能日: 通年
- 発売金額: 大人 1,900円、小児 950円
- 発売箇所: 東上線・越生線の各駅窓口、ふかや花園・寄居・長瀞・秩父・御花畑・影森・三峰口の各駅窓口
秩父鉄道まで、東武東上線経由でアクセスする場合には、「SAITAMAプラチナルート乗車券」がおすすめです。東武東上線の池袋~寄居間がフリーエリアに入っていますので、秩父鉄道へのアクセスも含めて、この1枚で完結してしまいます。
秩父鉄道線内のフリーエリアは、ふかや花園駅~三峰口駅の間です。寄居駅から「SLパレオエクスプレス」に乗車して、長瀞や秩父観光におでかけの場合には、秩父鉄道線のフリーエリアに収まります。
詳しくは、秩父鉄道のWebサイトもご確認ください。
「SLパレオエクスプレス」で訪れたい沿線の観光スポット
SLパレオエクスプレスに乗車して訪れたい沿線の観光スポットをご紹介します。
急流をくだる迫力満点の「長瀞ライン下り」(長瀞駅下車)
秩父鉄道沿線の観光地の一つが長瀞です。駅前の乗船券売場で乗船券を購入、荒川の河川敷へと行くとすぐにライン下りの乗り場があります。(乗船するコースによっては、より上流からの乗船となる場合もあります)
約20分ほどのコースですが、ところどころにある急流を勢いよく下る、迫力満点のアトラクションです。本気で川の水をかぶるスリルもあります。
紅葉の時期に訪れれば、ライン下りの船内から、荒川の両岸の紅葉を眺めることもできます。
詳しくは、以下の旅行記をご覧ください。
地球が造った奇跡の地形「岩畳」(長瀞駅下車)
長瀞駅から徒歩数分のところに、長瀞渓谷があります。前述の長瀞ライン下りの乗り場のすぐ近くです。
そこには、「岩畳」という珍しい地形があります。岩がミルフィーユのように薄く積み重なった地形は、国指定の天然記念物に指定されています。
駅から徒歩で気軽に訪問できますので、ちょっと散策したい、というときにもおすすめです。
秩父のパワースポット「秩父神社」(秩父駅下車)
秩父駅から徒歩5分ほどのところに「秩父神社」があります。
秩父神社は、知知夫国(秩父)を開拓した知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)が祖神をお祀りしたことに始まるとされています。現存する御社殿(上の写真)は、1592年に徳川家康公が寄進された由緒あるもので、埼玉県の有形文化財に指定されています。
秩父神社は、三峯神社、宝登山神社と並んで「秩父三社」に数えられています。秩父三社の中ではもっともアクセスのしやすいところにありますので、秩父鉄道の旅の途中で立ち寄って見るのもよいと思います。
ゴールデンウィークが見ごろ! 羊山公園の「芝桜」(御花畑駅下車)
秩父駅の一つ先、「御花畑」(おはなばたけ)駅から徒歩20分ほどのところに、羊山公園があります。羊山公園は芝桜で有名で、例年、ゴールデンウィーク頃(4月下旬~5月上旬)に見ごろを迎えます。
「SLパレオエクスプレス」も御花畑駅に停車しますので、途中下車しての観光もおすすめです。
アクセスなど、詳しくは、以下のWebサイトをご確認ください。
SLのメンテナンスや転車台での回転を見学できる!「SL転車台広場」(三峰口駅下車)
「SLパレオエクスプレス」の終点となる三峰口駅では、下り「SLパレオエクスプレス」が到着したあと、上り「SLパレオエクスプレス」(熊谷行き)が発車するまでの間に、蒸気機関車のメンテナンス作業や、転車台での回転、蒸気機関車を客車の反対側に付け替える作業などを見学することができます。
三峰口駅からすぐのところに「SL転車台公園」があり、そこでは、間近にSLのメンテナンス作業を眺めることができます。転車台もすぐ近くにあり、蒸気機関車が転車台に載せられて回転する様子も見ることができます。
「SLパレオエクスプレス」で三峰口駅に到着した場合には下車したあとすぐに、三峰口駅から「SLパレオエクスプレス」に乗車する場合には、少し早めに到着して、見学してみましょう。
2023年のダイヤでは、転車台での蒸気機関車の回転は13時30分頃に見ることができます。
SL転車台公園のSLのメンテナンス作業や転車台での回転の様子は、2023年8月に乗車した「SLパレオエクスプレス」の乗車記の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
以上、『秩父鉄道「SLパレオエクスプレス」に乗って長瀞・秩父へ行こう! SL指定席券の予約方法やお得な乗車券、沿線の観光スポットを紹介!』でした。東京から最も近いSL。しっかりと事前に指定席を予約して、SL乗車と観光を楽しみましょう!
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