神奈川県の工業地帯を走る「鶴見線」をご存知でしょうか? 大きな工場や物流倉庫が立ち並ぶ工業地帯への通勤路線ですが、朝晩のラッシュ時間帯を除くと、その様子はまさに都会の秘境路線。川崎や横浜といった東海道線の主要駅からすぐのところを走っているとはとても思えない路線です。
そんな鶴見線に30年ぶり(!)に乗車してきましたので、その様子をお伝えします。
鶴見線とは?
鶴見線は、鶴見駅を起点に、以下の3つの本線・支線からなるJR東日本の路線です。
- 鶴見~扇町(本線: 7.0km)
- 浅野~海芝浦(海芝浦支線: 1.7km)
- 武蔵白石~大川(大川支線: 1.0km)
本線の鶴見~扇町の路線から、海芝浦支線、大川支線が分岐する形になっています。
この地図のように、本線は鶴見川を渡って、首都高速横羽線と平行に進みます。その途中の浅野駅、武蔵白石駅から支線が分岐し、それぞれ埋立地の端まで行っています。
本線は、浜川崎駅から運河を渡って扇町駅まで到達します。浜川崎駅は、南武線の支線(尻手~浜川崎)との接続駅です。
このように、鶴見線は、工場が立ち並ぶ埋立地の中を、運河を渡りながら進む路線なのです。
鶴見線 乗車レポート
ということで、早速、鶴見線に乗ってみましょう。
頭端式の懐かしい鶴見駅のホーム
4月のとある天気のよい土曜日、鶴見駅に到着したのは14時過ぎ。早速、鶴見線のホームに向かいます。
鶴見駅の京浜東北線のホームは地上にありますが、鶴見線は高架の2階にあります。途中、同じJR東日本の路線にもかかわらず、中間改札があります。鶴見線の他の駅がすべて無人駅で、簡易Suica改札機が置いてあるだけなので、この中間改札で乗車記録を確認しているのでしょうね。
鶴見線のホームは頭端式の2面2線。アーチ型の屋根が古めかしい雰囲気を醸し出しています。
鶴見線の電車は、205系の3両編成。古くは山手線に投入され、通勤電車といえば205系!というほどの勢力を誇っていましたが、首都圏では次々と姿を消しています。
この205系、先頭車が「クモハ204形」という形式で、これも長編成が多い首都圏では珍しいですね。ク(制御車=運転台のある車両)、モ(電動車=モーターのある車両)、ハ(普通車)という意味ですが、編成が長い場合は、先頭車はモーターのない車両(「クハ」という形式)が多いのですよね。
昭和が取り残された「国道駅」
14時30分に鶴見駅を発車。7人がけのロングシートの1~2名程度と、かなり空いています。
東海道線や京浜東北線、京急線の線路を超えて左にカーブすると、すぐに「国道(こくどう)駅」に到着。いきなり下車します。
国道駅の改札は、鶴見線のホームの高架下にあります。この高架下、まるで数十年前から時間が止まってしまったかのような雰囲気を残しています。
営業していると思われる焼き鳥屋以外に、普通の民家と思われる家も数軒あるのですが、お住まいの方がいらっしゃるのかはわかりませんでした。
人通りは思ったよりも多いようです。国道へ抜ける近道として、日常的に利用されているようです。ただ、国道駅を利用する方は、ほとんど見かけませんでしたが…。
国道駅の改札口です。自動券売機が一台と簡易Suica改札機があるだけです。当然のことながら無人駅ですが、この自動券売機の裏側は、かつては駅員室だったのかもしれません。
国道駅の高架下を抜けると、その横には国道15号線(別名:第一京浜)が走っています。クルマの通りはとても多く、至って普通の都市という感じ。国道駅の高架下に入ると、一気に昭和にタイムスリップしてしまったかのような錯覚に陥ります。
次の電車に乗るために、簡易Suica改札機にモバイルSuicaをタッチして入場します。階段の途中には、上り線と下り線のホームをつなぐ通路があります。先ほどの高架下のトンネルを横切っています。
通路から高架下を見下ろしてみました。右側に民家が並んでいますが、おそらく鶴見線の高架を造ったときに一緒に建てられたのでしょうね。高架に組み込まれてしまっているので、誰も住まなくなってしまっても、取り壊すことができないのでしょうか。
1日に電車は3本!? 徒歩で訪れた「大川駅」(大川支線)
国道駅から、15時02分発の浜川崎行きの電車に乗車します。すぐに鶴見川を渡ると、次第に工場が増えてきます。15時10分着の武蔵白石駅で途中下車。
武蔵白石駅は、大川支線との分岐駅です。その大川支線の終点、大川駅を目指すのですが、大川駅に行く電車は、土休日はなんと1日に3本だけ! 鶴見駅発07時10分、07時55分の次は、17時45分発まで、約10時間も電車がありません。仕方がないので、歩いて行こうというわけです。
幸い、武蔵白石駅から大川駅までは約1km、徒歩でも15分ほどで到着します。
日中、大川駅へ向かおうとした人が時刻表を見て途方に暮れるのか、こんな張り紙までありました。要は、歩いて行けと…。
地図のとおり、武蔵白石駅を出て右へ進み、踏切を渡ります。しばらく行くと、運河を渡ります。
交通量はそれほど多いわけではないのですが、工業地帯ということもあり、行き交うクルマはみな大型のトラックで、ちょっと威圧感があります。歩道を歩いていれば安全ですが…。
ということで、大川駅に到着しました。これまた、今にも朽ち果てそうな駅舎ですが、一応、毎日電車がやってくる、れっきとした駅です。
大川駅のすぐ先で線路は途切れています。その向こうには、日清製粉の大きな建物が。工場でしょうか。
大川駅のホームから。夕方まで電車は来ませんので、当たり前ですが、誰もいません。線路に並行している、先ほど歩いてきた道路には、大型のトラックが頻繁に行き来しています。ちょうどツツジがきれいに咲いていました。
大川駅のホームにもこんな掲示が。鉄道の駅なのに、近くのバス停を案内してしまっています(笑) どうしても電車に乗りたい人は、武蔵白石駅へどうぞ。
南武支線との乗り換え駅「浜川崎駅」
武蔵白石駅に戻ってきました。
武蔵白石駅手前の大川支線の分岐です。右側へ行くと、先ほど徒歩で訪問した大川駅に着きます。
武蔵白石 15時50分発の浜川崎行きの電車に乗車。わずか7分で浜川崎駅に到着しました。
浜川崎駅は、鶴見線と南武支線の乗り換え駅です。南武線の本線は川崎~立川を結ぶれっきとした通勤路線ですが、途中の尻手(しって)駅から浜川崎駅まで支線が伸びています。
浜川崎駅は、狭い道路を挟んで、鶴見線の駅と南武支線の駅が少し離れています。どちらも無人駅で、簡易Suica改札機が置いてあります。ただ、鶴見線と南武支線を乗り換える場合には、「簡易Suica改札機にタッチしないように」とアナウンスがありました。タッチしてしまうと、一度下車したことになって、料金の通算ができなくなってしまうのですね。
南武支線の電車がやってきました。2両編成の205系です。本線の方は、新しいE233系電車が走っていますが、支線のほうはワンマン化改造された205系です。
鶴見線のホームに戻ってくると、扇町行きの列車が入ってきました。
浜川崎駅の鶴見線のホームは、ご覧のようにとても幅が狭く、電車が入ってくると少し怖いくらいです。
鶴見線本線の終点駅「扇町駅」はネコ達の聖地?
浜川崎から乗車した16時13分発の扇町行きの電車。3両編成ですが、後ろの2両は誰も乗っていません。浜川崎でほとんどの乗客が下車してしまいました。これ、100万都市の川崎を走る電車とはとても思えません。
わずか4分で終点の扇町駅に到着しました。周囲には工場が点在するだけの駅ですが…。
そんな駅で出迎えてくれたのが、扇町駅の構内に住み着いていると思われるネコ達です。いい天気だったので、日陰の涼しいところでおやすみ中でした。
人を怖がることは全く無く、むしろネコのほうから近寄ってくるほどです。なんというか、人がいようがいまいがお構いなし!といった感じです。
この扇町駅に限らず、鶴見線の駅はネコが多いようですね。その中でも、扇町駅は、ネコスポットとして知られているようです。今回訪れたときには少なくとも5匹は確認できました。
ということで、長くなったので、次回に続きます。
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