東海エリアには、太平洋から内陸部へと川沿いに走る「飯田線」「身延線」といった川の車窓が美しい路線と、太平洋の大海原が車窓を飾る「紀勢本線」などの海の路線があります。いずれも長大な路線で、長距離を走る普通列車が残っていて、青春18きっぷでの旅も楽しいエリアです。
長大な渓谷と急流が素晴らしい川の路線
東海エリアの川の路線は、3000メートル級の南アルプスや中央アルプスがつくる深い谷を流れてくる「急流」が多いのが特徴です。そのため、天竜川沿いの渓谷美が美しい「飯田線」や、あっという間に川幅が広くなる富士川に沿う「身延線」など、急流の川ならではの車窓を眺めることができる路線が多くあります。
天竜川の渓谷美と伊那谷の河岸段丘が見どころの「飯田線」
愛知県の豊野駅と長野県の辰野駅を結ぶ長大なローカル線「飯田線」。全長195.7kmと長大なローカル線なのですが、駅数が94と多いのも特徴的です。特急「伊那路」が豊橋~飯田間に2往復運転されている以外は、すべて普通列車のみの路線です。
飯田線といえば「秘境駅」が有名です。秘境駅が多い区間は、天竜川の渓谷沿いを走りますので、車窓も見ごたえがあります。秘境駅巡りを楽しむのも良いですが、列車の本数がかなり少ないので、しっかりと計画を立ててから望みましょう。以下の記事では、主要な秘境駅6つを1日で訪問する行程を掲載していますので、参考にしてみてください。
飯田線は全線を走破する列車が何本かありますので、一気に乗りとおしても良いのですが、所要時間は6時間以上にも及びます。ローカル線に乗りなれた鉄道ファンでもなかなかタフな旅になりますので、途中下車を楽しむのも良いでしょう。
途中下車スポットとしておすすめなのが、天竜峡駅です。天竜川がつくる渓谷「天竜峡」を散策することができます。飯田線の区間運転の列車は天竜峡駅が始発・終着となっていることが多いので、列車の乗り継ぎの点からもおすすめです。
天竜峡の散策については、以下の散策記をご覧ください。1時間ほどでお手軽に散策できるコースを紹介しています。
天竜峡駅から北側は、視界が一気に開けてきます。天竜川がつくる河岸段丘の上を走ります。特徴的な地形が「田切地形」。伊那大島~駒ヶ根間では、飯田線線路がかなり蛇行しています。これは、南北に流れる天竜川がつくる河岸段丘を、東西に流れる天竜川の支流が削ってできた地形です。支流が削った谷を避けるために、上流側に迂回するのです。Google Mapのような地図アプリと車窓を見比べながら乗車すると楽しいです。
飯田線の乗車記については、以下の記事をご覧ください。車窓の見どころはもちろんのこと、途中下車したい沿線のおすすめスポットも紹介しています。
日本三大急流「富士川」と日本最高峰「富士山」の車窓が素晴らしい「身延線」
身延線は、山梨県の甲府駅と静岡県の富士駅を結ぶJR東海の路線です。甲府の市街地を抜けるあたりから富士宮の手前まで、日本三大急流の一つ、富士川に沿って走ります。
天竜川ほど渓谷が発達しているわけではありませんが、中流域の甲府盆地あたりから、下流域の富士宮近くまでの間に、一気に川幅が広くなります。
身延線の南側、富士宮周辺からは富士山をきれいに眺めることができます。すそ野まで遮るものがないところを通りますので、見事な富士山が見えるのです。
富士宮駅から徒歩でアクセスできる浅間神社、B級グルメの富士宮焼きそばなど、観光やグルメも充実していますので、途中下車もおすすめです。
身延線の車窓と沿線の観光スポットについては、以下の記事にまとめています。身延駅から路線バスでアクセスできる「身延山」、源泉かけ流しのぬる湯を楽しめる「下部温泉」など、観光スポットも多くあります。
身延線に乗車するのであれば、特急「ふじかわ」も活用しましょう。日中時間帯、普通列車は2時間に1本程度しかない区間もありますが、その間を埋めるように特急「ふじかわ」が走っています。自由席特急料金が330円(25kmまで)からと、短距離でも利用しやすくなっています。
特急「ふじかわ」については、以下の記事をご覧ください。
紀伊半島をぐるっとまわる海の路線「紀勢本線」
紀勢本線は、三重県の亀山駅と和歌山県の和歌山市駅を結ぶ、全長384.2kmにも及ぶ長距離の路線です。紀伊半島の外周をぐるりとまわる路線です。
紀勢本線の紀伊長島~新宮~御坊間では、車窓から太平洋を望むことができます。新宮駅より東側では、リアス海岸がつくる入り江を眺めることができます。一方、新宮駅より西側では、車窓いっぱいに太平洋の大海原を眺めることができます。
紀勢本線の車窓については、以下の乗車記をご覧ください。写真多めで車窓を紹介しています。
紀勢本線は長大な路線ですので、途中下車しながら観光も楽しんでみましょう。ここでは、鉄道駅からアクセスしやすい観光スポットを紹介します。
まず紹介するのは、紀伊勝浦駅から路線バスでアクセスできる「那智の滝」です。日本三大名瀑の一つに数えられる滝です。落差が大きく迫力がありますが、とても荘厳な感じのする滝でもあります。
那智の滝の近くには、「熊野那智大社」や「青岸渡寺」などもありますので、あわせて観光するとよいでしょう。
那智の滝の訪問については、以下の記事をご覧ください。
串本駅からコミュニティバスで約15分、本州最南端の「潮岬」を訪れてみましょう。潮岬観光タワーからの太平洋の眺めは絶景! レストランやお土産屋などもありますので、途中下車しての観光にぴったりです。
潮岬については、以下の記事をご覧ください。串本駅からのアクセスについても紹介しています。
東阪間を結ぶ大幹線「東海道本線」と魅力的な私鉄路線
東海エリアを代表する在来線といえば東海道本線です。いまや旅客輸送は東海道新幹線に譲りましたが、貨物輸送では現在も東阪間を結ぶ大動脈。青春18きっぷシーズンには東海道本線で移動する人も多くいます。
そして、東海道本線から分岐する第三セクター路線や私鉄路線にも魅力的な路線が多くあります。
在来線では東阪間最速ルート、青春18きっぷでの移動も!
東海道本線は東京駅と神戸駅を結ぶ大幹線。東阪、東名間の移動は東海道新幹線に譲りましたが、首都圏、中京圏、大阪圏の通勤通学輸送はもちろんのこと、静岡県内の中規模都市近辺での輸送も担う路線です。
沿線には都市部や住宅街が多いため、車窓を楽しむといった路線ではありません。それでも、在来線では東阪・東名間の移動では最速ルートとなるため、青春18きっぷシーズンを中心に、東海道本線で長距離移動をします。
東海道本線の移動でポイントになるのは、東西にひたすら長い静岡県をいかに楽に移動するかです。以下の記事では、静岡県内をできるだけ楽に移動するためのコツを紹介していますので、ぜひご覧ください。
長大な東海道本線の沿線には多くの観光地がありますが、富士山を眺められるポイントとしてぜひ立ち寄ってもらいたいのが、興津駅と由比駅の間にある「薩埵峠(さったとうげ)」です。
富士山を望む景勝地「薩埵峠」(さったとうげ)は、富士山だけでなく、駿河湾や伊豆半島、手前を走る東名高速道路、国道1号線、それに、東海道本線などの構造物を一望にできる絶景ポイントです。山が海へせり出している場所にあたるため、東阪間を結ぶ大動脈がすべてここに集まっているのです。
冬の空気の澄んだ日に、興津駅から由比駅へのハイキングをするのがおすすめです。以下の記事でハイキングのコースとともに紹介していますので、ぜひご覧ください。
開業時からの古い駅舎や駅舎グルメが魅力的な「天竜浜名湖鉄道」
東海道線の掛川駅と新所原駅の間を、浜名湖の北側を通って結ぶのが、第三セクター鉄道「天竜浜名湖鉄道」です。昭和10年の開業当初から残る古い駅舎やホーム上屋など、登録有形文化財が多数ある路線です。その古い駅舎を利用した蕎麦屋、カフェ、ラーメン屋など「駅舎グルメ」も多く、乗り歩き、食べ歩きが楽しい路線です。
天竜浜名湖鉄道の乗り歩きについては、以下の記事をご覧ください。主要な古い駅舎や駅舎グルメを紹介しています。
天竜浜名湖鉄道の拠点となる駅が、天竜二俣駅です。同社の本社や車両基地がある天竜二俣駅では、いまだ現役で使われている転車台や、貴重な文化財を見学できる「転車台&鉄道歴史館見学ツアー」を開催しています。
40分ほどのツアーですが、実際に利用されている車両を転車台で入れ替える様子を目の前で見学することができます。また、現役で利用されている木造長屋の運転区事務室・休憩室、転車台の横にある扇形車庫、貴重な資料が所狭しと展示されている「鉄道歴史観」などを見学することができ、非常に内容の濃いツアーになっています。
「転車台&鉄道歴史館見学ツアー」に参加したときの様子を以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
修善寺温泉へのアクセス路線、世界遺産「韮山反射炉」も!「伊豆箱根鉄道 駿豆線」
伊豆箱根鉄道「駿豆線」は、三島駅と修善寺駅を結ぶ路線です。全線で20kmに満たない路線ですが、終点の修善寺温泉をはじめ、沿線には伊豆長岡温泉、世界遺産の韮山反射炉、伊豆の国パノラマパークなど観光スポットを多く抱える路線です。
伊豆箱根鉄道「駿豆線」の乗車記と沿線の観光スポットについては、以下の記事をご覧ください。
全駅から富士山が見える! 「岳南電車」
岳南電車は、東海道本線の吉原駅から岳南江尾駅までを結ぶ、全長9.2km、駅数10のミニ鉄道です。車窓からは迫力のある富士山が見えたり、工場の敷地内を走ったりと、短いながら見どころの多い鉄道です。工場夜景を眺める列車を運転することでも知られています。
岳南電車の乗車記については、以下の記事をご覧ください。
東海エリアの鉄道旅行・乗り鉄におすすめのきっぷ
東海エリアを鉄道で旅するときにおすすめのきっぷを紹介します。
JR東海の在来線全線+16の私鉄に乗り放題!「JR東海&16私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ」
「JR東海&16私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ」は、JR東海の在来線全線と、東海エリアの16の私鉄に、土日の2日間乗り放題となるフリーきっぷです。大人8,620円と安くはありませんが、フリーエリアがとても広いので、東海道本線を中心に、あちこちの私鉄路線や第三セクター路線を乗り歩くのに向いているきっぷです。
東海道新幹線は、熱海~米原間の「こだま」「ひかり」のみ、別途、特急券を購入すれば乗車することができます。
「JR東海&16私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ」については、以下の記事でわかりやすくまとめていますので、ぜひご覧ください。
身延線、東海道本線の乗り鉄におすすめ!「休日乗り放題きっぷ」
東海道本線(熱海~豊橋)、御殿場線全線、身延線全線に土休日の1日乗り放題となるきっぷが「休日乗り放題きっぷ」です。東海道本線の移動とともに、身延線や御殿場線に乗車するのにぴったりのきっぷです。
別途、特急券を購入すれば、身延線の特急「ふじかわ」にも乗車することができます。
「休日乗り放題きっぷ」については、JR東海のWebサイトをご確認ください。
中京エリアの乗り鉄に便利な「青空フリーパス」
名古屋を中心とした中京エリアのJR東海の在来線に、土休日の1日乗り放題となるきっぷが「青空フリーパス」です。
本記事で紹介した路線では、飯田線の南側(豊橋~飯田)、東海道本線(二川~名古屋~米原)などに乗車することができます。
「青空フリーパス」については、JR東海のWebサイトをご確認ください。
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当ブログでおすすめの路線や列車、沿線の観光スポットなどをエリアごと、ジャンルごとに紹介しているページです。筆者が各地の観光列車やローカル線に乗車した時の乗車記をまとめています。沿線の観光スポットやお得なきっぷについての情報も紹介しています。鉄道旅行・乗り鉄の際の参考にぜひご覧ください!
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