JR北海道の「単独で維持困難な線区」のうち、バス転換が適当とされていた留萌本線ですが、早ければ2023年3月末に石狩沼田~留萌間を廃止する方向で、JR北海道と沿線4市町が調整しているとの報道がありました。残る深川~石狩沼田間は3年程度存続する方向とのことです。
留萌本線 石狩沼田~深川間、早ければ2023年3月末に廃止へ
JR北海道と沿線4市町は、「単独で維持困難な線区」のうちバス転換が適当とされていた留萌本線について、石狩沼田~留萌間(35.7km)を2023年3月末で廃止、残る深川~石狩沼田間を3年程度存続する方向で調整しているとの報道がありました。

報道によると、「近く首長が集まり判断する」とのことですので、おそらくこのまま合意されるものと考えられます。
このまま合意されることになれば、JR北海道の「単独で維持困難な線区」のうち、バス転換が適当とされた5線区について、全ての路線が廃止・バス転換で決着が着くことになります。
ちなみに、留萌本線は、もともと深川~増毛間を結んでいましたが、末端部分の留萌~増毛間が2016年12月に廃止になっています。今回、石狩沼田を境に段階的に廃止ということになれば、以下のように数年ごとにどんどん路線が短くなっていくことになります。
- 留萌~増毛: 2016年12月に廃止
- 石狩沼田~留萌: 早ければ2023年3月末に廃止
- 深川~留萌: 2026年頃に廃止?
通学利用のために部分存続を求める3市町に配慮して段階廃止へ
留萌本線を巡っては、JR北海道と沿線の4市町(留萌市、深川市、沼田町、秩父別町)が協議を進めていましたが、留萌市は早々に廃止・バス転換を容認、残りの3市町は深川~石狩沼田間の部分存続を求めていました。
留萌本線は、函館本線の深川駅と留萌駅を結ぶローカル線です。輸送密度は、以下のように推移しています。
- 1975年度: 2,245人
- 1985年度: 645人
- 2000年度: 322人
- 2010年度: 229人
- 2018年度: 145人
- 2019年度: 137人
- 2020年度: 90人
人口減少に加えて、留萌本線とほぼ並行して建設されていた「深川留萌自動車道」が2020年に全線開通したことも、留萌本線の乗客の減少に拍車をかけています。
一方で、留萌本線の需要は、途中の石狩沼田駅を境にして大きく変わります。
(出典)JR北海道Webサイト「地域交通を持続的に維持するために」 留萌線の線区データより
深川~石狩沼田間は165人/日以上の利用がありますが、石狩沼田から先は40~50人/日程度と、一気に需要が減っています。また、深川~石狩沼田間は、利用者の3分の2が定期利用客です。これは、深川駅近くにある高校に通う学生さんが利用しているためです。
このような事情を配慮して、留萌町を除く3市町は、深川~石狩沼田間の部分存続を要望していたと思われます。
一方、これに対して、JR北海道は、部分存続の場合には、沿線自治体に赤字分の負担(年間約3億円)を求めていました。JR北海道にしてみれば、1日に200人前後しか乗らない区間はバスで十分なのに、あえて高コストな鉄道を維持するのであれば、その分を負担してほしい、ということでしょう。JR北海道の主張にも一理ありますし、十分に理解できます。
今回の報道では、3年間という期限付きでの存続が報じられていますが、その3年間の費用負担を沿線自治体に求めるのか、それとも、3年間はJR北海道の負担で運行を継続するのかは報じられていません。ただ、近々合意という報道からすると、費用負担の有無についても、何らかの調整が進んでいると思われます。このあたりの調整が済んでから、正式に沿線4市町とJR北海道で合意することになるのでしょう。
JR北海道がバス転換を目指す5線区は全て廃止で決着へ
JR北海道が廃止・バス転換を目指すとした5線区の状況は、以下のとおりです(2022年7月現在)。
路線 | 線区 | 状況 |
---|---|---|
石勝線 | 新夕張~夕張 | 2019年4月に廃止 |
日高本線 | 鵡川~様似 | 2021年4月に廃止 |
札沼線 | 北海道医療大学 ~新十津川 | 2000年5月に廃止 |
留萌本線 | 深川~留萌 | 運行中 段階廃止に合意へ |
根室本線 | 富良野~新得 | 運行中(一部代行バス) 廃止・バス転換を容認 |
根室本線の富良野~新得間については、沿線自治体が存続を断念して、バス転換の協議を進めていくことになっています。

今回、最後まで残っていた留萌本線について、JR北海道と沿線自治体が段階廃止の方向で調整しているということで、JR北海道がバス転換を目指すとしていた5線区については、全て廃止・バス転換ということで決着しそうです。
JR北海道の経営再建、次の焦点は2000人/日以下の8線区へ
JR北海道が「単独で維持困難な線区」を発表してから6年弱。この間、コロナ禍があり、沿線自治体との協議の遅れなどもありましたが、ようやく、輸送密度200人/日以下の5線区の協議にめどがついたことになります。ここ数年間、毎年のようにJR北海道の路線が廃止されてきましたが、これもひと段落でしょう。
ただ、JR北海道が「単独で維持困難な線区」としてあげている路線はまだたくさんあります。次の焦点は、「JR北海道としては鉄路を維持したいが、国や沿線自治体の支援が必要」とされている以下の8線区になります。
- 釧網本線 釧路~網走間
- 花咲線 釧路~根室間
- 石北本線 旭川~網走間
- 宗谷本線 旭川~稚内間
- 富良野線 富良野~旭川間
- 根室本線 滝川~新得間
- 室蘭本線 苫小牧~岩見沢間
- 日高本線 苫小牧~鵡川間
バス転換を目指すとしていた5線区が、ほぼローカル輸送に特化した路線だったのに対して、上記の8線区は、特急が走る都市間輸送を担う路線や、沿線に観光地を抱える観光路線、貨物列車が走る路線など、路線によって性格が大きく異なります。
また、国や沿線自治体の支援を得るにしても、この8線区は距離が長く、赤字額も大きいため、一筋縄ではいかないでしょう。
2021年度のJR北海道の線区別の収支では、以下のようになっています。
- バス転換を目指す路線(営業中の2線区): 合計損益 ▲12.7億円
- 鉄路としての維持を目指す8線区: 合計損益 ▲141.7億円
JR北海道が単独では維持できない以上、この141億円という赤字額を誰かが負担しなくてはいけないわけです。それが国なのか、沿線自治体なのか、あるいは、JR貨物なのか……。沿線の自治体だけが合意すれば廃止・バス転換が実現できた5線区とは異なる難しさがありそうです。
留萌本線 最後の夏? 乗り納めは早めに!
このままJR北海道と沿線自治体が合意すれば、2022年夏は、留萌本線の石狩沼田~留萌にとっては「最後の夏」となってしまいそうです。
青春18きっぷでの乗り納めという意味では、2023年春に廃止になるとしても、2022年夏、2022-23年冬、2023年春の3回のチャンスがあります。ただ、冬の北海道は天候が不安定ですし、廃止の時期が近づけば乗り納めの乗客で混雑することは必至です。
この夏に留萌本線の石狩沼田~留萌間の乗り納めをしておくのがよさそうです。
留萌本線の様子については、以下の乗車記もご覧ください。2018年8月下旬の平日に乗車した際の記録です。

以上、「留萌本線 石狩沼田~留萌間が2023年3月末にも廃止へ! 深川~石狩沼田間は3年程度存続!」でした。鉄道ファンとしては廃止は残念ですが、客観的に見ても鉄道の役目を終えたと言わざるを得ません。せめて、しっかりと乗り納めをしておきたいところですね。
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