ひさの乗り鉄ブログ

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2021年春の運行開始に向けて準備が進む阿佐海岸鉄道「DMV」計画概要まとめ! 土休日には室戸岬への直通運転も!


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四国の片隅を走る3駅のみのミニ鉄道「阿佐海岸鉄道」。2020年度中に世界で初のDMVの本格運行を開始する予定になっています。計画は徐々に進んでおり、2020年7月からは接続するJR四国の牟岐線内でも工事が始まります。DMVの運行開始が現実のものとなってきました。

阿佐海岸鉄道、2020年度中にDMVの営業運転を開始へ!

阿佐海岸鉄道は、徳島県、高知県などが出資する第三セクターの鉄道会社です。路線はただ一つ、「阿佐東線」のみ。四国の南東部、海部駅と甲浦(かんのうら)駅の8.5kmを結ぶミニ鉄道です。

↓阿佐海岸鉄道の乗車記は以下の記事をご覧ください。

www.kzlifelog.com

そんな小さな鉄道会社の阿佐海岸鉄道ですが、JR北海道が開発した「DMV」(Dual Mode Vehicle)の営業運転を2020年度内に開始することになっています。

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(出典)◆ DMV(デュアル・モード・ビークル)を知っていますか? |(阿佐海岸鉄道Webサイトより)

DMVは、鉄道と道路の両方を走行できる車両です。阿佐海岸鉄道が導入するのは、マイクロバスを改造した車両で、すでに3両が完成しています。

阿佐海岸鉄道 阿佐東線内での構造物の工事も進んでいます。2020年春には、鉄道の終点である甲浦駅で、高架の線路から地上の道路へ降りるための坂路が整備されました。

そして、2020年7月からは、接続するJR牟岐線内での工事も開始されることが発表されました。この工事に伴い、JR牟岐線は、牟岐駅~海部駅間でバス代行となります。

阿佐海岸鉄道 DMV導入計画の概要

現時点で判明している阿佐海岸鉄道のDMV導入計画についてまとめてみます。

鉄道モードでの走行区間は阿波海南駅~甲浦駅の4駅

DMVには、線路上を車輪で走行する「鉄道モード」と、道路上をタイヤで走行する「バスモード」という2種類の走行モードがあります。

そのうち、「鉄道モード」で運行されるのは、以下の4駅の区間(全長10.0km)であることが発表されています。

  • 阿波海南 === 海部 === 宍喰 === 甲浦

現在の阿佐海岸鉄道 阿佐東線の区間は、海部~甲浦間ですが、一駅先の阿波海南駅からDMVが鉄道モードで走行することになります。

阿波海南駅~海部駅は、現在はJR四国の牟岐線となっていますが、この1駅間は、DMVの営業運転開始時に、JR四国から阿佐海岸鉄道へ編入される予定になっています。

ちなみに、「鉄道モード」であっても、動輪は線路に乗ったタイヤのほうであり、車輪はガイドの役割を果たすだけです。

モードチェンジは阿波海南駅と甲浦駅で実施

DMVの二つの走行モードのチェンジは、「鉄道モード」で走行する区間の両端の駅となる「阿波海南駅」と「甲浦駅」で実施します。両駅には、線路から道路へ、または、道路から線路へ移行するための設備(モード・インター・チェンジ)が設けられます。

「鉄道モード」と「バスモード」を転換する「モード・インター・チェンジ」
「鉄道モード」と「バスモード」を転換する「モード・インター・チェンジ」

(出典)第5回「阿佐東線DMV導入協議会」資料(阿佐海岸鉄道 Webサイトより PDFファイル)

鉄道モードで運転される途中駅となる宍喰駅と海部駅には、道路へ下りるための設備は設けられません。

また、阿波海南駅と甲浦駅での乗降は、現在の鉄道のホームではなく、「バスモード」にチェンジしたうえで、新たに設けられるバス停で実施することになります。

阿佐海南駅のDMV整備計画
阿佐海南駅のDMV整備計画

(出典)第5回「阿佐東線DMV導入協議会」資料(阿佐海岸鉄道 Webサイトより PDFファイル)

阿波海南駅では、上の図のように、JR牟岐線の現在のホームの横にバス停が設けられます、バス停の先にはモード・インター・チェンジが設置され、バスモードから鉄道モードに転換して鉄道区間へ入っていきます。

甲浦駅のDMV整備計画
甲浦駅のDMV整備計画

(出典)第5回「阿佐東線DMV導入協議会」資料(阿佐海岸鉄道 Webサイトより PDFファイル)

甲浦駅は高架上にホームがありますが、モード・インター・チェンジを経て、バスモードに転換したあと、地上へ下りるためのスロープのような坂路が整備されました。DMVの乗降は、地上に設けられたバス停で実施するようです。

鉄道区間での車両はDMVのみに、鉄道車両は廃止へ

甲浦駅に入線する阿佐海岸鉄道の気動車
甲浦駅に入線する阿佐海岸鉄道の気動車

DMVが「鉄道モード」で走る阿波海南駅~甲浦駅間ですが、DMVの営業運転が開始されたら、この区間はDMVのみが走行することになります。現在走行している鉄道車両は走ることができなくなります。

国の指針として、DMVが「鉄道モード」で運転される区間は、DMVの専用区間とすることが定められているためです。

そもそも、DMVと鉄道車両では乗降口の高さや線路からの距離が異なるため、「鉄道モード」で線路上に停車して乗降する必要がある宍喰駅と海部駅では、ホームの改修が実施されます。

阿佐海岸鉄道は、現在、2両の気動車を保有していますが、いずれも、DMVの営業開始時には廃止となります。阿佐海岸鉄道の「鉄道車両」に乗車できるのもあとわずかということですね。

阿佐海岸鉄道 DMV「バスモード」では室戸岬への運行も計画!

DMV化で期待されるのが、駅での乗り換えなしで、主要施設へアクセスできるようになる点です。

2019年12月に開催された「第5回 阿佐東線DMV導入協議会」の資料では、バスモードでの運行ルート案が示されています。

阿波海南文化村~道の駅宍喰温泉(リビエラししくい)が標準ルートか?

阿佐海岸鉄道DMVの運行ルート案
阿佐海岸鉄道DMVの運行ルート案

(出典)第5回「阿佐東線DMV導入協議会」資料(阿佐海岸鉄道 Webサイトより PDFファイル)

運行ルート案では、以下の案が示されています。

  • 阿波海南文化村(海南病院) --- 阿波海南駅 ======= 甲浦駅 --- 海の駅東洋町 --- 道の駅宍喰温泉

"---"はバスモード、"==="は鉄道モードでの運行区間です。

阿波海南駅から先へは、約1km離れた「阿波海南文化村」まで運行される案となっています。

www.town.kaiyo.lg.jp

「阿波海南文化村」は、博物館や文化館などが集まった複合施設で、観光客向けと地元民向けの施設を兼ねているようです。

また、すぐ近くには「町立海南病院」もあり、地元の方々の通院も便利になりそうです。

一方、甲浦駅から先へは、「海の駅東洋町」を経由して、「道の駅宍喰温泉」まで運行する案が示されています。

「海の駅東洋町」は、東洋町の海産物や農産物の販売やレストランなどがある「道の駅」のような施設です。甲浦駅からは約1kmです。

www.town.toyo.kochi.jp

「道の駅宍喰温泉」は、海陽町の観光拠点で、売店、観光案内所、海陽町産品直売所などがあります。隣の「ホテルリビエラししくい」には日帰り温泉施設もあります。

www.kaiyo-kankou.jp

これらの施設は、観光客、地元民の両方を対象にしたものだと思います。DMVにより乗り換え不要で直通するようになれば、車を運転できない地元のお年寄りや、公共交通機関を利用する観光客の需要が見込めます。

土休日には室戸方面へも1往復運転!

観光客にとって注目すべきは、土休日に限りますが、室戸方面への運転が計画されていることです。

甲浦駅~室戸岬の間には、現在、「高知東部バス」の路線バスが運転されています。この路線バスは、室戸岬の西側、後免や奈半利などから室戸岬を経由し、甲浦駅までの長距離を走ります。室戸岬の海岸沿いを走る絶景路線でもあります。

www.kzlifelog.com

この路線バスの東側のルート、甲浦駅~室戸岬間を、阿佐海岸鉄道のDMVが走るものと思われます。

高知方面から室戸岬へ観光に来た観光客を、徳島まで呼び込むことができるかもしれません。また、その逆も可能でしょう。

室戸は、奇岩が立ち並ぶ室戸岬だけでなく、「室戸世界ジオパークセンター」など、地形好きにはたまらない観光地です。高知や徳島から離れているため、公共交通機関のみでは、なかなか周遊ルートになりにくいエリアですが、DMVの物珍しさも手伝って、観光客が増える効果が期待できるのではないかと思います。

阿佐海岸鉄道のDMV、バス転換ではない価値を提供できるか?

世界初の本格的な営業運転ということで注目を浴びている阿佐海岸鉄道のDMVですが、一方で、メリットを出しにくい交通システムでもあります。

鉄道と道路の両方を走れると聞くと、メリットがありそうに聞こえますが、全区間「バス」ではなぜいけないのか? という質問に答えるのが難しいのです。

よほどの山奥でない限り、たいていは鉄道に並行して道路があります。実際、阿佐海岸鉄道のDMVが走る区間は、下の地図のように、ほぼ国道55号線と並行しています。


鉄道とバスを比較するのであれば、輸送力の違いなどで鉄道が有利になることもありますが、阿佐海岸鉄道DMVの車両は、定員約20名のマイクロバスです。大型の路線バスよりも小さいのですね。

もちろん、最初は物珍しさもあるので、観光資源にもなるでしょう。ただ、それも最初だけです。DMVという交通システムが継続していくためには、路線バスにはない価値を提供できるかにかかっています。


以上、『2021年春の運行開始に向けて準備が進む阿佐海岸鉄道「DMV」計画概要まとめ! 土休日には室戸岬への直通運転も!』でした。運行開始が待ち遠しいのと同時に、今後、地元に受け入れられるのかという不安もあります。「DMV」が日本で定着していくことができるかの試金石になりそうです。