JR東日本は、同社の新幹線と在来線特急列車のグリーン料金を、2022年春から改定すると発表しました。値上げといっても、2002年に導入した割安なグリーン料金を撤廃し、JR他社と同水準に戻すといったほうが正しいですが、特別車両の実質的な料金値上げが続きそうです。
JR東日本が新幹線・特急列車のグリーン料金を2022年春に改定へ!
JR東日本は、2022年春から、同社の新幹線(北陸新幹線のJR西日本区間含む)と在来線特急列車のグリーン料金を改定すると発表しました。
対象となる列車と設備は、以下のとおりです。
- 東北・山形・秋田・上越・北陸の各新幹線のグリーン車・グランクラスに適用する料金
- 在来線特急列車のグリーン車に適用する料金
- 「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン・グリーン個室に適用する料金
改定内容は、以下のとおりです。
【グリーン料金・グランクラス料金(新幹線・在来線特急列車)】
- | グリーン料金 | グランクラス(飲料・軽食あり) | グランクラス(飲料・軽食なし) | |||
---|---|---|---|---|---|---|
営業キロ | 現行 | 改定 | 現行 | 改定 | 現行 | 改定 |
~100キロ | ¥1,050 | ¥1,300 | ¥6,290 | ¥6,540 | ¥4,200 | ¥4,450 |
~200キロ | ¥2,100 | ¥2,800 | ¥7,340 | ¥8,040 | ¥5,250 | ¥5,950 |
~300キロ | ¥3,150 | ¥4,190 | ¥8,390 | ¥9,430 | ¥6,300 | ¥7,340 |
~400キロ | ¥4,190 | ¥4,190 | ¥9,430 | ¥9,430 | ¥7,340 | ¥7,340 |
~500キロ | ¥4,190 | ¥5,400 | ¥9,430 | ¥10,640 | ¥7,340 | ¥8,550 |
~600キロ | ¥4,190 | ¥5,400 | ¥9,430 | ¥10,640 | ¥7,340 | ¥8,550 |
~700キロ | ¥4,190 | ¥5,600 | ¥9,430 | ¥10,840 | ¥7,340 | ¥8,750 |
701キロ~ | ¥5,240 | ¥6,600 | ¥10,480 | ¥11,840 | ¥8,390 | ¥9,750 |
【「サフィール踊り子」プレミアムグリーン料金】
- | プレミアムグリーン料金 | |
---|---|---|
営業キロ | 現行 | 改定 |
~100キロ | ¥2,550 | ¥2,800 |
~200キロ | ¥3,600 | ¥4,300 |
【「サフィール踊り子」グリーン個室料金】
- | グリーン個室料金 | |
---|---|---|
設備 | 現行 | 改定 |
4人用個室 | ¥8,400 | ¥11,200 |
6人用個室 | ¥12,600 | ¥16,800 |
詳しくは、JR東日本のニュースリリースをご確認ください。
JR東日本のグリーン料金はJR6社共通料金と同水準へ
今回のJR東日本のグリーン料金の改定は、JR他社よりも割安だったグリーン料金を、JR他社の水準にまで戻すという側面が強いものになっています。
今回の改定で2002年以前のグリーン料金と同水準に
実は、JR東日本は、2002年の東北新幹線八戸延伸開業時に、グリーン料金を値下げしています。現行のグリーン料金は、2002年に値下げされた料金がベースになっていて、消費税率の引き上げ分だけが値上げされたものになっています。
現行と改定後のグリーン料金を、2002年以前のグリーン料金と比較してみましょう。
営業キロ | 現行 | 改定 | 2002年以前 |
---|---|---|---|
~100キロ | ¥1,050 | ¥1,300 | ¥1,240 |
~200キロ | ¥2,100 | ¥2,800 | ¥2,670 |
~300キロ | ¥3,150 | ¥4,190 | ¥4,000 |
~400キロ | ¥4,190 | ¥4,190 | ¥4,000 |
~500キロ | ¥4,190 | ¥5,400 | ¥5,150 |
~600キロ | ¥4,190 | ¥5,400 | ¥5,150 |
~700キロ | ¥4,190 | ¥5,600 | ¥6,300 |
~800キロ | ¥5,240 | ¥6,600 | ¥6,300 |
801キロ~ | - | - | ¥7,440 |
改定後のグリーン料金と、2002年以前のグリーン料金を比べてみると、ほぼ同水準であることがわかります。前述のとおり、消費税率の引き上げ分を考慮すると、601キロ~700キロの区分以外はほぼ同じであることがわかります。つまり、2002年の値下げ以前のグリーン料金に戻したということです。
なお、JR東日本には、自社エリア内で801キロ以上を走る新幹線や特急列車がないため、801キロ以上のグリーン料金は設定されていません。
改定後のグリーン料金はJR6社共通のグリーン料金とほぼ同じ
一方で、JR他社のグリーン料金と比べると、JR東日本の改定後のグリーン料金はどうなるでしょうか。
営業キロ |
JR東日本 (改定後) |
JR共通料金 |
---|---|---|
~100キロ | ¥1,300 | ¥1,300 |
~200キロ | ¥2,800 | ¥2,800 |
~300キロ | ¥4,190 | ¥4,190 |
~400キロ | ¥4,190 | ¥4,190 |
~500キロ | ¥5,400 | ¥5,400 |
~600キロ | ¥5,400 | ¥5,400 |
~700キロ | ¥5,600 | ¥6,600 |
~800キロ | ¥6,600 | ¥6,600 |
801キロ~ | - | ¥7,790 |
JR東日本の改定後のグリーン料金は、やはり601キロ~700キロの区分以外は全く同じです。
ここでの「JR各社共通のグリーン料金」は、以下の場合に適用されるグリーン料金です。
- JR北海道、JR東海、JR西日本(北陸新幹線を除く)、JR四国内の新幹線・特急列車のグリーン料金
- JR会社間をまたがって運転される特急列車のグリーン料金
JR九州だけはグリーン料金が異なりますが、「JR各社共通のグリーン料金」は、事実上の標準的な料金であるといっても良いでしょう。
今回のJR東日本のグリーン料金の改定は、この「JR各社共通のグリーン料金」にあわせるということなのです。
601キロ~700キロの区分は現行からの値上げ幅を考慮か?
JR東日本の改定後のグリーン料金と、JR各社共通のグリーン料金で、唯一異なるのが601キロ~700キロの区分です。
- JR東日本(現行): 4,190円
- JR東日本(改定後): 5,600円
- JR各社共通料金: 6,600円
他の料金区分では、値上げ幅は、最大で1,360円(701キロ以上)ですが、601キロ~700キロの区分をJR各社共通料金にあわせてしまうと、2,410円もの値上げになってしまいます。現行からの値上げ幅を考慮して、JR各社共通よりも安い料金を設定したものと思われます。
ちなみに、「601キロ~700キロ」の区分には、秋田新幹線の東京~秋田(662.6km)が入ります。グリーン料金を値上げし過ぎて、利用を避けられてしまう可能性も考慮したのかもしれません。
今後もJR各社の実質的な「料金」値上げが続くか?
2020年からのコロナ禍で、収入が半減したJR各社は、実質的な「料金」の値上げに動いています。
先日も、JR九州が、在来線特急列車の特急料金の値上げを発表したばかりです。これまで、JR他社に比べて割安だったJR九州の特急料金は、一気に最も高い水準にまで引き上げられる予定です。
また、料金の改定ではないですが、JR東日本は、通勤ライナーを廃止して、同じ区間に通勤特急を新設しています。ライナー券と特急券の料金を比較すると、事実上の料金値上げと言ってよいでしょう。
2021年3月のダイヤ改正では、東海道線の通勤ライナー「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」を廃止し、代わりに特急「湘南」を新設しました。
少子高齢化・人口減少が進むと、鉄道会社の収入の要である通勤・通学需要が減っていきます。この傾向にあることは、ずっと前からわかっていましたので、鉄道各社は、運賃以外に、特急料金やライナー料金を得られる列車を増やしています。乗客数の減少を、乗客当たりの単価を増やすことで補おうということでしょう。関東の大手私鉄がロング/クロス転換シート車による有料座席指定列車を導入したり、2023年度末に予定されている中央線へのグリーン車の導入も、その一環だと思われます。
そして、2020年からのコロナ禍により、在宅勤務・テレワークの導入が一気に進み、鉄道会社の想定よりもずっと早く、通勤需要の減少が進んでいます。コロナ後も、通勤需要が元に戻ることはないとみて、JR東日本とJR西日本は、時間帯別運賃を導入する検討を始めています。
このような状況からすると、特急料金や指定席料金などの、いわゆる「料金」の値上げは、今後も続いていくと見るのが自然でしょう。また、新たに「料金」を徴収することができる列車や設備の導入も進んでいくでしょう。
本来、収益改善のためには、運賃の値上げを検討すべきなのですが、鉄道会社の運賃は認可制となっていてハードルがかなり高いため、コロナ後の需要がどの程度まで回復するのか(しないのか)を見定めないと難しいという事情もありそうです。そのため、「届け出」で済む料金の値上げを先行しているということでしょう。
以上、「JR東日本が新幹線と在来線特急列車のグリーン料金を値上げ、JR他社と同水準へ!」でした。利用者としては値上げはないほうがありがたいですが、鉄道インフラを今後も維持していくために必要なコストは支払うべきという考え方もあります。今後の運賃や料金の議論に注目したいと思います。
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