大阪と名古屋を結ぶ近鉄の特急「アーバンライナー」。新幹線のほうが圧倒的に速い区間ですが、新幹線とは全く異なる区間を走る近鉄特急も人気です。新幹線より時間はかかりますが、ゆったりとした座席で、車窓を眺めながらの移動は、鉄道旅行の醍醐味でもありますね。今回は奮発して「デラックス席」に乗車しましたので、その様子をレポートします。
近鉄特急「アーバンライナー」とは?
近鉄(近畿日本鉄道)は、JR以外では最大の路線網を持つ鉄道会社です。関西では大阪や京都、愛知など2府3県にまたがる巨大な路線を保持しています。
各路線で特急が運転されているわけですが、その中でもフラグシップ的な存在と言えるのが、大阪難波~近鉄名古屋間を結ぶ特急列車です。2020年に「ひのとり」がデビューして以来、フラッグシップを譲った感はありますが、「アーバンライナー」も名阪特急として、まだまだ現役で活躍しています。
大阪難波~近鉄名古屋の所要時間は2時間20分ほど。近鉄特急の所要時間と料金を、東海道新幹線やJR在来線と比べてみると、以下のようになります。
路線・列車 | 区間 | 所要時間 | 運賃+特急料金 | 備考 |
---|---|---|---|---|
近鉄「ひのとり」 | 大阪難波~近鉄名古屋 | 約2時間10分 | 4,990円 | 運賃+特急料金 |
近鉄「アーバンライナー」 | 大阪難波~近鉄名古屋 | 約2時間20分 | 4,790円 | 運賃+特急料金 |
東海道新幹線「のぞみ」 | 新大阪~名古屋 | 約50分 | 5,830円 | 自由席利用 |
東海道新幹線「こだま」 | 新大阪~名古屋 | 約1時間10分 | 5,830円 | 自由席利用 |
東海道本線 | 大阪~名古屋 | 約2時間40分 | 3,350円 | 米原・大垣で乗り換え |
※「ひのとり」「アーバンライナー」はレギュラー車両の料金です
東海道新幹線と比べると、倍以上の時間がかかってしまいますが、運賃+特急料金の合計は1,000円ほど安くなります。時間に余裕があるのであれば、近鉄の特急列車を利用してみるのもよいでしょう。
近鉄アーバンライナー(大阪難波~近鉄名古屋) 必要なきっぷと料金、特急券の予約方法は?
近鉄アーバンライナーに乗車する際に必要なきっぷと料金(大阪難波~近鉄名古屋)は以下のとおりです。
種別 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
普通運賃 | 2,860円 | |
特急料金 | 1,930円 | 特急列車に乗車 する場合に必要 |
DX料金 | 520円 | デラックス車両に 乗車する場合に必要 |
合計で、レギュラー車両なら4,790円、デラックス車両なら5,310円になります。
近鉄アーバンライナーはすべて指定席で運転されていますので、事前に特急券を予約・購入する必要があります。空席があれば駅でも購入できますが、確実に希望の列車に乗車したい場合には、近鉄が提供する「インターネット予約・発売サービス」で購入されることをおすすめします。
特に、デラックス席は1列車に1両(36席)しかありませんので、あらかじめ予約・購入しておくほうがよいでしょう。
「インターネット予約・発売サービス」は、上記の近鉄のWebサイトの右側にある「インターネット予約・発売サービス」のリンクをクリックすればログイン・会員登録の画面に行くことができます。
近鉄「アーバンライナー」デラックス席 乗車記
青春18きっぷで紀勢本線に乗ったあと、JR難波駅から近鉄難波駅へ向かい、近鉄特急「アーバンライナー」に乗車することにしました。
大阪難波の近鉄ホームへ
改札を入って階段を降りると、地下ホームになっています。大阪難波駅には近鉄と阪神が乗り入れているので、一大ターミナルなのかと思っていたら、地下鉄の駅のような狭い駅だったのでびっくり!
ホームは3本しかないのに、名古屋方面行きだけで1時間に20本もの列車をさばいています。次から次へと列車がやってくる様子は、見ていても壮観ですね。乗車する予定のアーバンライナーがやってくるまで、ホームの端のほうで、普段は見かけない電車たちを眺めて過ごしました。
デラックス席の座席は独立3列シート!
16時50分過ぎに、アーバンライナー 近鉄名古屋行きが入線してきました。6両編成の特急列車ですが、今回は奮発して「デラックス席」に乗車することにしました。乗車券(大阪難波~近鉄名古屋間2,860円)特急料金(同1,930円)のほかに、520円のDX料金がかかりますが、関東在住の私が近鉄の特急に乗車する機会はほとんどないでしょうから、せっかくなのでということで乗車したわけです。
デラックス車両の車内は、ゆったりとした一人掛けのシートが横3列並んでいます。間に通路があるので2+1列の配置に近いですが、座席は一つずつ独立していますので、隣の人が気になることはありません。プライベート空間が確保できるので、読書やパソコン作業にも集中できるでしょう。
インターネットでの予約時に座席が選べたので、今回は通路を挟んで一列のみの窓側の席を選びました。
2列並びの座席も、一つずつ独立しています。
実際に座席に座ってみると、座り心地は上々! 横幅も広めですが、前後の座席との間隔も広くとられているので、かなりゆったりと感じられます。足元にはフットレストがあり、長時間の乗車でも足が疲れることはありません。ちなみに、フットレストの前面に足を乗せるときには靴を脱ぐようにとの注意書きがありました。
車両自体が古いので、最近の特急列車にあるようなコンセントやWiFiのサービスはありません。これは仕方がないですね。その点を除けば、かなりグレードの高い車両だと思います。
※2021年以降、「アーバンライナー」にも順次WiFiとコンセントの設置が進められています。
なお、2023年現在、「アーバンライナー」には車内販売はありません。
大阪の市街地を抜けて住宅街へ
乗車した「アーバンライナー」は、17時ちょうどに大阪難波駅を発車。しばらく地下を走行して、大阪上本町駅、鶴橋駅と停車します。この二駅から乗車してくる方も結構いました。近鉄の大阪の中心駅ですからね。
鶴橋駅を出ると、ようやく特急らしい走りになります。途中、近鉄奈良線と分かれて、アーバンライナー近鉄名古屋行きは、近鉄大阪線を走行します。近鉄奈良線は真東に進むのに対して、近鉄大阪線は南東方向に進む感じですね。
大和川を渡ったあたりから、車窓に低山が目立ってきます。北側が大阪と奈良を隔てる生駒山地、南側が金剛山地です。これら二つの山地の間にある切れ目を抜けるように、東の方向へと進んでいきます。奈良県に入り、再び住宅地になると、間もなく大和八木駅に停車します。ここまで30分ほど無停車、しかもかなり快調に飛ばしてきています。特急の名に恥じない走りですね。
大和八木駅は、近鉄大阪線と近鉄橿原線の乗り換え駅です。橿原線は南北に走っていて、南へ行けば吉野線に入って吉野山へ。北に行けば、奈良・京都へ、といった感じで、近鉄にとっては要衝となる駅のようです。
紀伊半島の付け根の山地を縫って東進
大和八木を出ると、田園風景が増えてきます。奈良盆地を抜けて、いよいよ紀伊半島の付け根にある笠置(かさぎ)山地と高見山地の間を抜けていきます。
山地の合間を縫うように進み、少し開けたところには集落と田畑が広がる、という感じのところを走っていきます。ところどころでスピードが落ちるものの、全体的には快調に飛ばしていきます。気が付くと三重県に入っていました。
陽がだいぶ傾き、山間部はすでに夕暮れの時間です。名張を過ぎ、伊賀〇〇という駅をいくつか通過すると、次第に山地を抜けて田畑が広がる平地が目立つようになってきました。
近鉄名古屋線に入ってラストスパート!
近鉄大阪線の終点、伊勢中川駅の手前で、近鉄名古屋線へショートカットします。これまでずっと東のほうに進んできましたが、ここからは北寄りに進路を変えて名古屋を目指します。
津駅には定刻より4分ほど遅れて18時27分頃に到着。大和八木駅から1時間近くも無停車で走ってきたことになります。このあたりで下車する人が多いのかと思いきや、乗車する人のほうが多いのですね。津~名古屋でも特急で45分ほどかかりますので、特急利用がそれなりに多いのでしょう。
少し遅れていたこともあってか、ここからさらに本領発揮と言わんばかりに飛ばしていきます。
今回の青春18きっぷ旅の初日に、名古屋から快速みえで津を経由して伊勢市まで行きましたが、JRは気動車、近鉄は電車ということもあり、所要時間はかなり異なります。
- 近鉄特急 津 → 近鉄名古屋:約45分, 2,120円(乗車券1,210円+特急券910円)
- 快速みえ 津 → 名古屋:約57分, 1,290円(乗車券のみ, 指定席は+530円)
- 近鉄急行 津 → 近鉄名古屋:約66分, 1,210円(乗車券のみ)
こう見ると、近鉄特急は、速いもののかなり高いですね。座席が保証されているというのがメリットでしょう。JRの「快速みえ」は、所要時間ではかなり劣りますが、乗車券のみでよいので、ある程度はすみ分けができている感じでしょうか。とはいえ、乗車している感覚からすると、近鉄特急のほうが圧倒的に速く感じます。津から名古屋まで無停車というのもありますが、かなり飛ばすので爽快でもあります。
というようなことを考えていると、ほぼ定刻通りの19時10分頃に、終点の近鉄名古屋駅に到着しました。
大阪難波駅から近鉄名古屋駅まで約2時間10分。新幹線なら、のぞみで約50分、こだまでも1時間強ですが、近鉄特急を大阪から名古屋まで乗りとおす乗客が結構多かったのには驚きました。
個人的には、初めて乗る近鉄特急のほうが、新幹線よりも何倍も楽しめましたね。デラックス車両のゆったりしたシートも堪能できました。
以上、近鉄特急「アーバンライナー」デラックス席の乗車記をお届けしました。新幹線よりは時間がかかりますが、全線乗りとおす乗客が多かったように、デラックス席の乗り心地は抜群です。新幹線や東海道本線とは異なるルートを走りますので、車窓も楽しめます。時間に余裕がある方は、近鉄特急「アーバンライナー」を利用してみてはいかがでしょうか?
関連記事
和歌山県を走る和歌山電鐵貴志川線の乗車記です。貴志駅の「ニタマ」駅長に会い、「たま電車」に乗車してきました。
鉄道旅行や乗り鉄におすすめの路線や列車、途中下車して立ち寄りたい沿線の観光スポットなどを、エリア毎、ジャンルごとに紹介しているページです。ぜひご覧ください。
コメント