JR各社は2026年3月のダイヤ改正の概要を発表しました。「のぞみ13本ダイヤ」をはじめ、定期最終列車後の臨時列車を複数設定するなど、東海道新幹線の改正が目立ちます。JR九州は「かささぎ」減便に「リレーかもめ」増発など、西九州方面の運行体系の変更が実施されます。また、JR西日本では、京阪神エリアを中心に、有料座席サービス「うれシート」の大幅拡大が目立ちます。
この記事では乗り鉄的な視点で興味深いトピックをまとめます。
2026年春のJR各社ダイヤ改正（2026年3月14日）
JR各社（JR四国を除く）は、2026年3月14日にダイヤ改正を実施すると発表しました。各社のニュースリリースは以下のとおりです。（全てPDFファイルへのリンクです）
なお、JR四国は、2026年春のダイヤ改正を実施しません。
- 2026年3月ダイヤ改正について（JR北海道）
- 2026年3月ダイヤ改正について（JR東日本）
- ２０２６年３月ダイヤ改正について（JR東海）
- 2026年春のダイヤ改正について（JR西日本）
- 2026年春ダイヤ改正（JR九州）
【JR北海道】旭川方面の特急列車が全車指定席化、JR北海道の特急は全て全車指定席へ
札幌～旭川・稚内・網走方面の特急列車が全車指定席化され、JR北海道の特急列車は全て全車指定席となります。
特急「カムイ」「ライラック」「宗谷」「サロベツ」「オホーツク」を全車指定席化
JR北海道では、すでに函館方面の「北斗」、釧路方面の「おおぞら」などの特急列車が全車指定席となっていますが、2026年春のダイヤ改正では、これまで自由席が残っていた旭川・稚内・網走方面の特急列車でも全車指定席化されます。
具体的には、以下の列車が全車指定席となります。
- カムイ(札幌～旭川): 指定3両・自由2両 → 指定5両
- ライラック(札幌～旭川): 指定4両※・自由2両 → 指定6両※
- 宗谷(札幌～稚内): 指定3両※・自由1両 → 指定4両※
- サロベツ(旭川～稚内): 指定3両※・自由1両 → 指定4両※
- オホーツク(札幌～網走): 指定2両・自由1両 → 指定3両
※グリーン車（0.5両）を含む
これにより、JR北海道の在来線特急列車は、すべて全車指定席での運転となります。
また、あわせて、特急列車利用の割引きっぷやフリーきっぷの発売が終了し、基本的に「特急トクだ値1」「在来線チケットレス特急券（トク割）」に統一されます。
具体的な内容については、JR北海道のニュースリリースをご覧ください。
【JR東日本】東北・上越新幹線は終電繰り上げ、仙石線は新型車両統一で大増発へ！
JR東日本では、東北・上越新幹線の終電が繰り上げられます。また、仙石線は日中時間帯を中心に大幅に増発されます。釜石線では新型車両HB-E220系に統一されることにより、快速「はまゆり」が全車自由席化されます。
東北・上越新幹線は夜間作業時間拡大のため最終列車を繰り上げへ
東北・上越新幹線では、夜間作業時間拡大のため、東京発の下り最終列車の運転時刻の繰り上げ、運転取りやめなどが実施されます。
東北・上越新幹線の時刻を繰り上げる列車
東北新幹線では盛岡行き「やまびこ69号」の東京発が12分、仙台行き「やまびこ223号」が20分繰り上げられます。また、那須塩原行き「なすの281号」は運転を取りやめ、最終列車は「なすの279号」となり、東京発時点で20分繰り上げとなります。
上越新幹線では、越後湯沢行き「たにがわ417号」が東京発時点で16分繰り上げられます。
東北・上越新幹線は開業から40年以上が経過し、設備のリニューアルや地震対策工事が必要になっているとのことで、その夜間作業時間確保が目的となります。
東北新幹線「はやぶさ」増発、山形新幹線「つばさ」所要時間短縮へ
JR東日本の新幹線では、「はやぶさ」を1往復増発、「つばさ」はE8系統一に伴い最高速度を向上させることから所要時間の短縮が図られます。
- はやぶさ21号: 東京 11:57発 → 新青森 15:07着
- はやぶさ30号: 新青森 15:36発 → 東京 18:44着（始発駅を盛岡駅から新青森駅に変更）
「はやぶさ21号」は、2025年のダイヤでも臨時「はやぶさ57号」として運転されている列車です。利用状況が好調なのか、2026年春のダイヤ改正からは定期列車に昇格します。「はやぶさ30号」はその折り返し列車の運用でしょう。
山形新幹線では、「つばさ」がE8系に統一されることから、大宮～福島間の最高速度が時速275kmから時速300kmに引き上げられます。これにより、1往復の「つばさ」の所要時間が4分短縮されます。
- つばさ129号: 東京 09:00発 → 山形 11:38着（2時間38分、4分短縮）
- つばさ154号: 山形 17:05発 → 東京 19:44着（2時間39分、4分短縮）
仙石線は新型車両E131系統一で大増発！
仙石線は、ダイヤ改正を機に、すべての列車を新型車両E131系に置き換え、ワンマン運転を実施します。これに合わせて、日中時間帯のあおば通～多賀城間で大幅に増発します。これまで10～14時台はおおむね3～4本/時間だったところを、4～6本/時間へと増発します。
仙石線日中時間帯の大増発
（出典）2026年3月ダイヤ改正について（JR東日本 東北本部）
これまで仙台エリアでの増発には慎重だったJR東日本ですが、今回のあおば通～多賀城間の増発は、仙台都市圏の利便性向上に舵を切ったのかもしれません。1時間に5本程度あると、あまり時刻表を気にしないで駅に向かえるので、利便性は大幅に向上しますね。
釜石線の全列車をHB-E220系に統一、快速「はまゆり」は全車自由席に！
リクライニングシートがならぶ現行「はまゆり」の指定席車
釜石線では、2026年1月にHB-E220系を導入し、3月のダイヤ改正以降は、全列車がHB-E220系での運転となります。この「全列車」には、盛岡～釜石間で1日3往復運転されている快速「はまゆり」も含まれています。
快速「はまゆり」は、現在はキハ110系で運転されています。指定席があり、指定席の車両は上の写真のようにリクライニングシートを装備したグレードの高い車両になっています。ダイヤ改正以降は、すべてロングシートのHB-E220系に変更されることで、指定席はなくなってしまいます。そのため、列車の号数もなくなり、すべて快速「はまゆり」の列車名となります。
JR東日本では、ローカル線への新車の投入が進んでいますが、最近はロングシートのみの車両が基本となっています。ローカル線の主要な乗客である高校生の通学利用を考えると、ロングシート化することには合理性があると思います。ただ、快速「はまゆり」は、急行「陸中」の流れをくむ都市間輸送列車であり、今回のHB-E220系への統一は残念ですね。
【JR東海】東海道新幹線を強化！ のぞみ13本ダイヤ導入、京都始発「のぞみ」、品川行き「のぞみ」など導入
JR東海は、東海道新幹線を大幅に強化します。のぞみ13本ダイヤの導入をはじめ、早朝に京都始発の臨時「のぞみ」を、夜間に品川駅23時59分着の博多発臨時「のぞみ」を導入するなど、現地滞在時間の拡大を図ります。
最大で1時間にのぞみ13本！「のぞみ13本ダイヤ」導入
数年前に、大々的に「のぞみ12本ダイヤ」を導入したのは記憶に新しいですが、2026年の大改正では、あっという間にそれを塗りかえ、「のぞみ13本ダイヤ」を導入します。
臨時列車も含めて1時間に最大で13本の「のぞみ」を運転する時間帯は、以下のとおりです。
- 東京発: 7時台～10時台
- 新大阪発: 14時台～17時台
東海道新幹線のダイヤは臨時列車が多く、上記の「のぞみ13本ダイヤ」の時間帯でも、定期列車は6～7本と半数程度です。残りは臨時列車です。しかも、「繁忙期に臨時列車を運転する」という単純なものでもなく、季節や曜日によって、それこそ毎日のように運転される臨時列車が変わります。それでも、「のぞみ13本ダイヤ」を導入することで、お盆休みや年末年始などの繁忙期には、実際に1時間に13本の「のぞみ」を運転するようになるでしょう。
早朝に京都始発「のぞみ」、夜間に品川行き「のぞみ」臨時列車を設定
利用の多い時間帯での増発だけでなく、早朝や深夜に臨時列車を設定し、現地滞在時間の拡大を図る改正も実施されます。
- のぞみ548号: 京都 06:03発 → 東京 08:12着
京都始発の臨時「のぞみ548号」は、定期「のぞみ230号」（新大阪 06:00発）の前に運転されます。東京駅の到着が、「のぞみ230号」よりも11分早くなります。臨時列車ですので、毎日運転ではなく、月曜日（休日の翌日）と土曜日（連休初日）に設定されます。
一方、夜間には、品川行きの臨時「のぞみ」が設定されます。
- のぞみ206号: 博多 19:08発 → 新大阪 21:45発 → 品川 23:59着
定期の最終列車「のぞみ64号」のあとを走り、品川駅に23時59分着というかなり攻めたダイヤで運転されます。この臨時列車が運転される日は、博多駅で21分、新大阪駅と名古屋駅で18分、現地滞在時間を延ばすことができます。とはいえ、品川駅に23時59分に到着して、自宅、あるいは、ホテルなどに到達できるかをよく調べておかないといけませんね。
「サンライズ出雲・瀬戸」東京駅発車時刻が約20分繰り上げへ
出雲市駅に到着した「サンライズ出雲」
日本で唯一の定期寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」の下り列車の時刻が変更されます。改正前後の発時刻は以下のとおりです。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 東京 | 21:50 | 21:26 |
| 横浜 | 22:15 | 21:52 |
| 熱海 | 23:23 | 22:57 |
| 沼津 | 23:39 | 23:16 |
| 富士 | 23:53 | 23:32 |
| 静岡 | 00:20 | 23:59 |
| 浜松 | 01:12 | 00:54 |
※浜松駅から先の時刻は変更ありません
東京駅の発車時刻が24分、浜松駅の発車時刻が18分早くなっています。浜松駅から先の到着時刻には変更はないようなので、所要時間がその分増えることになります。
JR東海のダイヤ改正のリリースには、以下のように記載されています。
７. 「サンライズ瀬戸・出雲」の時刻を繰り上げ、夜間の保守作業時間を拡大します。
列車の安全運行に必要な鉄道施設の持続的な維持管理に向け、下り「サンライズ瀬戸・出雲」の時刻を繰り上げ、夜間の保守作業時間を拡大します。
深夜帯に「サンライズ出雲・瀬戸」が走るJR東海の区間での保守作業時間の拡大が目的のようです。さらに、静岡駅や浜松駅の営業時間を短縮することも狙っているのではないかと思われます。
【JR西日本】有料座席サービス「うれシート」設定線区・本数を大幅拡大、山陽新幹線は最終のあとに広島行き臨時「のぞみ」を設定！
JR西日本では、有料座席サービス「うれシート」の設定区間・設定本数を大幅拡大します。また、山陽新幹線では、定期の最終列車のあとに、臨時「のぞみ」広島行きを設定します。
有料座席サービス「うれシート」、設定区間を拡大、設定本数は倍増へ！
ダイヤ改正後の「うれシート」設定線区（京阪神エリア）
（出典）2026年3月14日ダイヤ改正を実施します(JR西日本ニュースリリース 2025年12月12日)
JR西日本は、京阪神エリアを中心に、有料座席サービス「うれシート」の設定線区を拡大します。また、すでにサービスを提供している線区でも、設定本数を大幅に増やします。
新たに「うれシート」が設定される線区は以下のとおりです。
- 大阪環状線（大和路線直通列車に設定）
- 琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線（新快速に新規設定）
- 呉線（広島～呉間）
すでに導入されている線区も含め、ダイヤ改正前後の設定本数は、以下のように変更になります。
ダイヤ改正前後の「うれシート」設定本数
（出典）2026年3月14日ダイヤ改正を実施します(JR西日本ニュースリリース 2025年12月12日)
既存の線区でも、琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線の快速では設定本数が3倍以上になるほか、大和路線でも大幅に設定本数が増えます。
琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線では、新快速列車に、リクライニングシートの専用車両を利用した「Aシート」のサービスを提供していますが、今回は、より簡易な「うれシート」も設定されることになります。単にのれんで半室を区切っただけのサービスですが、チケットレスで300円で利用できることもあり、人気があります。
今回のダイヤ改正での「うれシート」大幅拡大をみると、今後の京阪神エリアの有料座席サービスは「うれシート」が基本になるのかもしれません。編成の長い列車が走る線区では、いっそのこと全列車に設定してしまえば、よりわかりやすいサービスになるかもしれません。
定期最終列車のあとに臨時「のぞみ」広島行きを設定！
山陽新幹線では、東京始発 広島行き最終「のぞみ89号」（東京駅20時ちょうど発）のあとに、臨時「のぞみ215号」広島行き（東京駅20:09発）を設定します。
- 定期「のぞみ89号」: 東京 20:00発 → 広島 23:54着
- 臨時「のぞみ215号」: 東京 20:09発 → 広島 23:59着
東京駅出発時間はわずか9分ですが遅くなります。広島到着は23時59分とギリギリ。前述の上り臨時品川行き「のぞみ206号」もそうですが、新幹線を運転できる時間ぎりぎりの臨時列車を運転することで、少しでも現地滞在時間を延ばそうという意図が見えます。これも、それだけ需要のある東海道・山陽新幹線だからできることなのでしょうね。
【JR九州】「かささぎ」2往復減便、「リレーかもめ」「みどり」計2往復増発
JR九州では、「かささぎ」2往復が減便される代わりに、「リレーかもめ」「みどり」が計2往復増発されます。また、D&S列車「海幸山幸」が宮崎空港駅に乗り入れます。
「かささぎ」減便、「リレーかもめ」「みどり」計2往復増発へ
長崎本線・佐世保線の特急列車の本数
西九州方面では、特急列車の運行体系が見直されます。肥前鹿島発着の「かささぎ」が14本から10本に4本（2往復）減便される代わりに、「リレーかもめ」「みどり」が計2往復増発されます。
長崎本線の特急「かささぎ」（博多～肥前鹿島）については、西九州新幹線開業時に、3年間は運転本数（14本）を維持すると、佐賀県とJR九州が合意していました。2026年春のダイヤ改正は、その約束の3年が経過して初めてのダイヤ改正となります。
佐賀県をはじめとする地元自治体は、今回のダイヤ改正での減便に反発していますが、「3年間」と約束してしまった以上は仕方がないでしょうね。
長崎本線では、「かささぎ」減便の代わりに、普通列車が増発されます。
- 江北～肥前鹿島間: 42本 → 44本
- 肥前鹿島～肥前浜: 33本 → 36本
D&S列車「海幸山幸」南郷行きが宮崎空港経由に変更
ダイヤ改正後の「海幸山幸」の運行路線図
D&S列車（観光列車）「海幸山幸」は、日南線を経由して宮崎～南郷を結んでいますが、2026年のダイヤ改正では、南郷行きに限り、宮崎空港を経由するように運行体系が変更されます。
これにより、宮崎空港で、羽田・伊丹からの航空便（始発便）から、宮崎空港駅で直接「海幸山幸」に乗り継げるようになります。
また、南郷行きの運転時刻が40分ほど繰り上げられます。
- 現行: 宮崎 10:28発 → 南郷 12:13着
- 改正後: 宮崎 09:43発 → 宮崎空港 10:00発 → 南郷 11:32着
これにより、南郷駅での滞在時間が約2時間半に拡大します。
JR九州自慢の「D&S列車」も、運転開始からかなり年月が経過しており、そろそろテコ入れが必要な時期になっているのではないかと思われます。今回の「海幸山幸」の宮崎空港乗り入れも、そういった施策の一つでしょう。
以上、『【2026年春 JRダイヤ改正】東海道新幹線「のぞみ13本ダイヤ」、西九州方面の特急列車の運行体系変更、JR西日本は「うれシート」大幅拡大へ！』でした。ここ数年に比べると全体的に小幅な改正でしたが、東海道新幹線の攻めっぷりが目立つ改正となりました。
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