神戸駅を後にした列車は、わたらせ渓谷鉄道で随一と言ってもよい絶景区間に入ります。特に、沢入(そうり)駅と原向(はらむこう)駅の間は、白い御影石(花崗岩)が河原を覆う渡良瀬川の景色が眺められる区間です。
神戸駅から長いトンネルを通過
神戸駅を14:08に出発する列車に乗車します。大間々駅から乗車した列車ほどではありませんが、座席がほぼ埋まるくらいの盛況ぶりです。天気の良い土曜日とはいえ、関東のはずれを走るローカル私鉄がここまでにぎわっていると、乗り鉄としてはうれしくなってしまいますね。
神戸駅から乗車した列車はこちらのWKT-500形の新しい気動車です。なぜか形式名が「わ」から「WKT」に変わっていますね。WKTは"Watarase Keikoku Tetsudo"の頭文字をとったものだと思います。
このWKT-500形、新しいのはよいのですが、ロングシートなのが残念です。車窓をゆっくり眺めたいならば、古い「わ89形」のほうがよいですね。あとトイレも付いていないので要注意です。
神戸駅を出ると、すぐに長いトンネルに入ります。「草木(くさき)トンネル」で、全長5,242メートルもあります。わたらせ渓谷鉄道の他の区間ではこれほど長いトンネルはないので、なぜだろうと思って調べてみると、「草木ダム」を造るときに線路が水没するために、新線に付け替えられた区間だそうです。その新線区間の大部分を、この草木トンネルで抜けていきます。
ちなみに、このトンネル区間だけで高低差が140メートルもあるそうで、勾配を上る方向になる間藤行きの列車は速度が出ません。トンネルを抜けるのに約10分、神戸駅から次の沢入駅までは12分ほどかかります。
長いトンネルを抜けると、その草木ダム(草木湖)の上流側を渡り、ここから渡良瀬川は車窓左側(下り列車の場合)になります。
沢入駅で4分停車
次の沢入駅では4分間の停車時間があります。「沢入」と書いて「そうり」と読みますが、難読駅名の一つですね。
4分間の停車中、特に列車の交換(行き違い)はなかったようですが、何のための停車時間なのでしょうね? ただ、駅ホームからは渡良瀬川の河原が見えることもあり、多くの乗客がホームに下りて写真撮影をしていました。
この沢入駅も雰囲気のよい駅ですね。神戸駅と違って観光客が多いわけではないと思うのですが、駅の手入れがきちんとしていて好感が持てますね。
わたらせ渓谷鉄道随一の絶景区間!
沢入を出ると、いよいよわたらせ渓谷鉄道で随一の絶景区間に入ります。
進行方向(間藤方面)左側の車窓には、渡良瀬川が寄り添ってきます。このあたりの渡良瀬川は、大間々駅近くで散策した高津戸峡のあたりと比べると、かなり川幅が狭くなっているのがわかります。
河原には白い大きな、角の取れた石がたくさん転がっているのが見られます。花崗岩(御影石)ですね。昔から御影石が多く取れたこのあたりでは、石材業が盛んだったそうです。花崗岩は深成岩(マグマが地下深くでゆっくり固まってできた岩石)ですが、地殻変動などで地表付近でも一般的にみられるそうです。これだけあちこちに転がっていれば、採掘が盛んになるのもうなずけます。
わたらせ渓谷鉄道は、渡良瀬川の流れに沿って、右へ左へとカーブを曲がります。カーブのところでは、上の写真のように、さっきまで走ってきた線路が見えます。(写真左上の部分)
渡良瀬川の東岸にはわたらせ渓谷鉄道の線路、西岸には国道122号線がずっと続いていますが、わたらせ渓谷鉄道の線路のほうが川に近いところを通っています。このあたりは、ぜひ窓のないトロッコ列車に乗って、自然の空気を味わいながら楽しみたいところです。 まさに、「わたらせ渓谷鉄道」の名前は、この区間のためにあるのだという感じの車窓です。
原向駅を出発して少し進んだあたりで、渡良瀬川と国道122号線をオーバークロスすると、かつて足尾銅山で栄えた足尾の街並みが見えてきます。その中心駅の通洞(つうどう)駅に到着です。足尾銅山の炭鉱跡を利用した「足尾銅山観光」は通洞駅が最寄り駅ですが、以前、わたらせ渓谷鉄道に乗車したときに訪問したので、今回はパス。乗客のほとんどは、原向と通洞で下車してしまい、数名だけを乗せた列車は足尾駅へ向かいます。(つづく)
コメント