首都圏の私鉄各社で有料座席指定サービスの導入が相次いでいますが、東急電鉄もついに導入に踏み切るようです。2018年冬に、平日夜間の大井町線急行列車(田園都市線直通の長津田行き)に、有料座席指定サービスを導入することを発表しました。東武や西武、京王とは異なり、7両編成中、1両のみを座席指定車両にするという試みも注目です。
東急大井町線~田園都市線直通急行に座席指定車両を導入
東急電鉄は、2018年冬から、平日夜に大井町線から田園都市線方面への有料座席指定サービスを開始すると発表しました。
ニュースリリースの要点をまとめてみると、以下の通りとなります。
- 運転開始時期: 2018年冬
- 運転区間: 大井町線 大井町駅 → 東急田園都市線 長津田駅
- 列車種別: 急行
- (参考)現在の急行列車の停車駅は、大井町、旗の台、大岡山、自由が丘、二子玉川、溝の口、鷺沼、たまプラーザ、あざみ野、青葉台、長津田
- 運行時間帯: 平日 19時30分~23時台 大井町発を5本程度運行
- 指定席の座席数: 1列車あたり40席程度(1列車あたり1両のみ)
- 使用車両: 6020系(7両編成のうち1両を有料座席指定車両として、ロング・クロス転換シートを利用)
上記ニュースリリースに、クロスシート状態のイメージ図がありますが、S-TRAINや京王ライナーとほぼ同じような感じですね。
座席指定車両は1編成に1両のみ、座席数は少なめ
ここ数年、首都圏の大手私鉄各社が相次いで有料座席指定サービスを導入しています。
東急電鉄が導入を予定しているのと同じロングシートとクロスシートの転換座席を利用する有料座席指定列車だけでも、
- 東武鉄道:TJライナー(2008年6月開始)
- 西武鉄道:S-TRAIN(2017年3月開始)、拝島ライナー(2018年3月開始)
- 京王電鉄:京王ライナー(2018年2月開始)
があります。
これらの列車は、1編成を丸ごと有料座席指定列車として運行します。
一方、東急が導入しようとしている有料座席指定サービスでは、1編成(7両編成)中1両のみを座席指定車両として、残りの6両をロングシートの自由席としている ところが特徴的です。JR東日本の普通列車にグリーン車が付いている列車がありますが、それに似ていますね。
そのため、1編成に40席程度と、座席数は少なめです。JRの普通列車グリーン車は、全列車に連結されているからよいですが、東急大井町線は平日の夜間に5本程度しか運転されません。つまり、1日に合わせて200席程度。料金にもよりますが、あっという間に埋まってしまいそうですね。
料金・ダイヤはどうなるか?
今回は、料金とダイヤの詳細は発表されませんでしたが、勝手に予想してみたいと思います。
料金については、2018年に運転を開始した「京王ライナー」「拝島ライナー」が参考になりそうです。
- 京王ライナー(座席指定料金:400円 新宿~京王八王子で約40分、新宿~橋本で約35分)
- 拝島ライナー(座席指定料金:300円 西武新宿~拝島で約45分)
東急の大井町発、急行長津田行きの列車の所要時間(大井町→長津田)は40分程度です。
京王ライナー、拝島ライナーと同程度ですので、料金も300円~400円程度といったところでしょうか。座席数が少ないので、400円にしても埋まるかもしれませんね。
一方、2018年冬に導入ということですと、2018年3月30日のダイヤ改正で増発される「大井町発 急行長津田行き」のうちの5本程度が該当することになりそうです。
平日夜間の大井町発の急行長津田行きの列車は、以下の8本です。
大井町発 | 長津田着 | |
---|---|---|
19:30発 | → | 20:11着 |
20:15発 | → | 20:55着 |
20:30発 | → | 21:13着 |
21:05発 | → | 21:46着 |
21:20発 | → | 22:04着 |
22:27発 | → | 23:07着 |
22:51発 | → | 23:34着 |
23:09発 | → | 23:48着 |
ニュースリリースで、「19時30分~23時台に5本程度」となっていることから、19:30発と23:09発は当確でしょうか。残りの3本は、運転間隔を等間隔にしようとすると、20:30発、21:20発、22:27発となります。
ということで、太字にした5本かな、と予想しておきます。運用とかよくわかっていませんので、適当ですが…。
大井町線に付加価値を付けて田園都市線から乗客を誘導する戦略か?
東急電鉄の目下の課題は、田園都市線の混雑緩和です。JRや私鉄各社の乗車率(混雑率)は年々減少する方向ですが、東急田園都市線だけは、沿線住民が増え続けていることもあって、ラッシュ時の乗車率は改善していません。
すでに朝ラッシュ時間帯の増発余地はない上に、二子玉川~渋谷は地下化されていてホームの延伸が難しく、1列車あたりの両数を増やすこともままなりません。
そこで、最近では、大井町線を溝の口まで延伸したり、急行を増発、7両編成化したりして、田園都市線から大井町線へ乗客を誘導する戦略をとっています。
今回の大井町線への有料座席指定列車の導入は、この戦略の一環と見て良いでしょう。
本来ならば、田園都市線の渋谷方面への有料座席指定列車を導入したいところですが、現状では定員の少ない車両を入れる余地はなさそうです。
座席数が少なすぎる?
一般に、通勤電車のラッシュが激しいのは朝のほうです。今回導入される有料座席指定列車は、朝ラッシュ時に比べると、多少はダイヤや乗車率に余裕がある夜間の運転です。
それでも、帰宅時に確実に座って帰れるという選択肢があるのは魅力的です。この魅力により、田園都市線の渋谷方面から、大井町線経由に通勤経路を切り替える(定期券の経路を切り替える)乗客が出てくれば、田園都市線から大井町線への乗客の誘導に成功したことになります。
ただ、それにしては、座席数が少なすぎますね。あまりに座席数が少ないと、いつも満席で、指定席に乗りたくても乗れないということになりかねません。
将来的には、長津田まで直通する全列車で有料座席指定サービスを提供して、さらに、長津田への直通列車の増発も考えているのではないかと思います。
私鉄各社の導入も契機になったか?
前述のように、首都圏の私鉄各社では、通勤の快適性をアピールしつつ、客単価を上げることができる有料座席指定サービスを次々に導入しています。
もともと特急列車が定期的に走っている小田急や西武、東武、京成などに加えて、有料の列車がなかった京王電鉄も「京王ライナー」を導入したことで、首都圏の大手私鉄では、東急電鉄だけが同様の列車を運行していない状態になっていました。
「快適通勤」競争には加わりたいが、田園都市線(二子玉川~渋谷)には導入する余地がない、ということで、大井町線~田園都市線方面への導入ということになったのだと思います。
以上、東急大井町線に有料座席指定サービスが導入されるという話題でした。私鉄他社とは異なる1両のみの座席指定車両。どのような形で運転されるのか、今から運転開始が楽しみですね。