東急電鉄は4月21日に東急田園都市線、大井町線、世田谷線のダイヤ改正を実施すると発表しました。注目は、ダイヤ改正そのものよりも、田園都市線の混雑緩和施策です。ラッシュ時の輸送力増強が限界に達し、オフピーク通勤の推奨や、サテライトオフィスの無料利用などの多様な選択肢を提供するとしています。
4月21日に田園都市線・大井町線・世田谷線のダイヤ改正を実施
東急電鉄の発表によりますと、田園都市線・大井町線・世田谷線のダイヤ改正を4月21日に実施するとのことです。東横線は、相互直通運転する東京メトロ副都心線、西武池袋線などと合わせて3月25日にダイヤ改正を実施しますので、東急電鉄としては、今年は2回に分けてのダイヤ改正の実施となります。
4月21日のダイヤ改正の概要は以下の通りです。
- 田園都市線
- 平日早朝に渋谷行きの上り急行を2本増発(渋谷着5時台, 6時台)
- 平日早朝の渋谷発下り急行を1本、各駅停車を1本増発(渋谷発5時台, 6時台)
- 土休日の早朝に上り・下り1本ずつの急行を増発(渋谷発着5時台)
- 平日上りの初電を1~5分繰り上げ
- 大井町線: 一部列車の発着時刻を変更
- 世田谷線: 上り初電を2分繰り上げ
詳しくは、東急電鉄のニュースリリースをご覧ください。
ラッシュ時の増発余地が全くない田園都市線…
田園都市線の最重要課題は、年々ひどくなるラッシュ時の混雑緩和なのですが、上記のダイヤ改正の概要のとおり、ラッシュ時(渋谷着8時台)の増発はありません。現在のダイヤでも、朝8時台に渋谷に到着する上り電車は26本もあり、ほぼ2分毎に運転されている状況です。これ以上の増発は難しいのが現状でしょう。
田園都市線の混雑緩和に向けては、これまでもいろいろな取り組みがなされてきました。
- 2005年から6ドア車を連結(10両編成中3両)
- 2007年に朝ラッシュ時間帯の急行運転を取りやめ準急に変更(最も混雑する区間の急行運転の取りやめによる混雑平準化)
- 2009年に二子玉川~溝の口の複々線化により、大井町線を溝の口まで延伸(23区南部に向かう通勤客を大井町線に流す)
それでも、沿線人口の増加が続き、ここ数年では毎年混雑率が上昇しています。かくいう私も、15年間ほど、通学・通勤で田園都市線を利用していました。もともと混雑が激しかったですが、東武線と直通運転を開始してからは、さらに混雑がひどくなったという印象があります。
抜本的な解決策は、二子玉川~渋谷の複々線化や、ホーム延伸による1列車あたりの両数増加しかないと思いますが、同区間は地下路線となっているため、現状ではこれらの対策は困難な状況です。
通勤の選択肢を提供
そこで、東急が発表したのは、「移動手段を選ぶ」「働く場所を選ぶ」「乗車時間を選ぶ」という3つの取り組みです。
(参考)www.tokyu.co.jp
池尻大橋~渋谷の定期券客を対象に平行する東急バスへの無料乗車を提供
「移動手段を選ぶ」は、池尻大橋~渋谷の田園都市線の定期券を持つ通勤客を対象に、平行する国道246号線を走る東急バスに追加料金なしで乗車できるようにする施策です。上記リリースによると、おおむね三軒茶屋~渋谷間が対象のようです。
渋谷近辺、特に、国道246号線の近くに勤務先がある通勤客には喜ばれそうです。ただ、大多数の通勤客は、渋谷で下車しても他線に乗り換えるか、渋谷より先の東京メトロ半蔵門線へ直通するかだと思いますので、この施策の対象となる通勤客はごく限られそうです。
サテライトシェアオフィスの朝時間帯の無料利用
「働く場所を選ぶ」は、東急が運営するサテライトシェアオフィスを、契約企業の会員を対象に、朝の時間帯(午前7時~午前9時半)に無料で利用できるようにする施策です。田園都市線沿線では、二子玉川とたまプラーザにサテライトシェアオフィスがあるようです。
この施策も、対象が契約企業に限られたり、サテライトシェアオフィスが2駅にしかなかったりと、対象となる人が限られそうです。
早起き応援キャンペーン
「乗車時間を選ぶ」の施策は、オフピークの推奨です。田園都市線の各駅に午前7時まで(用賀~池尻大橋は午前7時20分まで)に自動改札を通過すると、TOKYU POINTが50ポイントもらえるとのことです。1ポイント1円でPASMOにチャージできるので、毎日50円ずつもらえることになります。なお、本施策は4月3日~6月30日の3か月間限定です。
もともと早めに家を出ている人はよいですが、この50円のために早起きしてオフピーク通勤をするかと言われると微妙ですね。
ということで、いずれも効果は限られそうな感じです。そもそも1本の列車(10両編成)には定員で1500人程度、200%の乗車率なら3000人も乗っていることになります。それが2分毎に走っているわけですから、これらの施策を数百人が利用したところで焼け石に水です。
働き方改革と連携すると効果がありそう?
鉄道会社1社だけの取り組みでは効果が限られていても、これをきっかけに、社会全体でオフピーク通勤やテレワークの導入などを推進していくことで効果が出てくることもありそうです。折しも、働き方改革が話題になっていますので、国、自治体、企業が連携して対応していくことが期待されます。
また、東京都が、今年の夏に「快適通勤ムーブメント」という通勤ラッシュの緩和を狙った施策を実施します。この中でも、鉄道会社が時差通勤の推奨を実施することをあげています。今回の東急の取り組みは、これを先取りしたものとみることができます。東京都の施策ですので、民間企業や自治体を巻き込んで、オフピーク通勤を本格的に実施してもらいたいところです。