山梨県と静岡県を結ぶ中部横断自動車道の建設が進んでいます。2019年3月10日には、六郷IC~下部温泉早川ICと、富沢IC~新清水JCT間が開通。これにより、甲府~静岡間の所要時間が約2時間に短縮されます。この区間は、JR身延線の特急「ふじかわ」も走っていますが、所要時間では逆転される見込みです。2019年度中にも予定されている中部横断自動車道の全線開通時には、高速バスの増発も予想されますが、特急「ふじかわ」はどうなってしまうのでしょうか?
中部横断自動車道 六郷IC~下部温泉早川IC、富沢IC~新清水JCTが2019年3月に開通
中部横断自動車道は、中央自動車道の双葉JCT(山梨県甲斐市)~新東名自動車道の新清水JCT(静岡県静岡市)を結ぶ74.5kmの高速道路です1。
現在(2019年2月時点)、双葉JCT~六郷IC(25.3km)のみ開通していますが、2019年度中には、残りの六郷IC~新清水JCT間も段階的に開通する予定です。
今回、六郷IC~下部温泉早川IC(約8km)と、富沢IC~新清水JCT(約21km)が、2019年3月10日に開通することが正式に発表されました。
これにより、山梨県庁~静岡県庁の所要時間が、現状の2時間30分から、約2時間に短縮されるとのことです。
都市間移動では鉄道と競合する高速道路
なぜ乗り鉄メインの当ブログで、高速道路の開通の話題を取り上げたのかというと、この中部横断自動車道、身延線にほぼ並行して建設されているためです。
身延線の車窓からも、建設中の中部横断自動車道をあちこちで見ることができます。
国鉄時代から、主に100~200kmほどの短距離では、鉄道と高速道路が競合しています。たいていは、あとから作られた高速道路のほうが線形が良く、所要時間も短くなるため、鉄道から自家用車や高速バスに乗客が流出するという現象が起きています。古くは、国鉄の大赤字の原因にもなりましたし、今では、JR北海道の衰退の一因にもなっています。
今回ご紹介する中部横断自動車道は、甲府~静岡の都市間移動では、まさに身延線の特急ふじかわと競合しています。
中部横断自動車道全線開通後、特急ふじかわはどうなる!?
中部横断自動車道が全線開通したら、特急ふじかわにどのような影響があるでしょうか?
特急ふじかわ、自家用車(中部横断自動車道利用)、高速バスの3つの交通手段について、甲府~静岡を移動する前提で比較してみましょう。
交通機関 | 所要時間 | 料金 | 運転本数 |
---|---|---|---|
身延線 特急ふじかわ | 2時間20分前後 | 4,100円 (普通車自由席) | 1日7往復 |
中部横断道 2019年2月時点 | 2時間35分 | 560円 ※1 | - |
中部横断道 2019年3月時点 | 2時間5分 | 1,530円 ※2 | - |
中部横断道 全線開通後 | 1時間45分 | 不明 | - |
高速バス 2019年2月時点 | 2時間50分 | 2,550円 ※3 | 土休日のみ 2往復 |
※1: 南アルプスIC~六郷ICを利用
※2: 南アルプスIC~下部温泉早川IC、富沢IC~新静岡ICを利用
※3: 往復4,590円、2019年3月31日までは片道1,500円のキャンペーン実施中
現在(2019年2月時点)は、所要時間では特急ふじかわが最も短く、2時間20分前後です。ただ、自家用車でも2時間35分程度と、所要時間では大差はありません。
一方、高速バスは、甲府~静岡間には、山梨交通・しずてつジャストラインが運行していますが、土休日のみの運行、それも朝と夕方の2往復のみです。料金は2,550円(2019年3月末までは1,500円)と、特急ふじかわに比べると圧倒的に安いですが、平日には運行されない、本数が少ないなど、利便性は特急ふじかわのほうが圧倒的に高い状況です。
中部横断自動車道が全線開通すると、一気に状況が逆転しそうです。甲府~静岡間のほとんどを高速道路で移動できるようになりますので、自家用車では1時間45分となります。高速バスについては、現時点では中部横断自動車道の全線を走る便が設定されるのか未定ですが、設定されるとしたら、所要時間は2時間を切るくらいになる可能性があります。
鉄道に対して所要時間でも優位性が見込めるとなれば、現在は土休日に2往復のみの高速バスが、平日にも設定されたり、本数が増えたりすることも十分に考えられます。少なくとも、特急列車が1日7往復するほどの需要があるのであれば、高速バスが本格的に参入してくることもありそうです。
普通列車は競合しないが特急ふじかわへの影響は大きそう
身延線の普通列車については、甲府や富士宮、富士周辺の通勤輸送、それに、沿線の通学輸送がメインですから、高速バスとは直接競合することはないでしょう。特に、身延線の南部、富士宮~富士の間は、中部横断自動車道とは並行していません。
やはり、影響が大きそうなのは、都市間輸送を担う特急ふじかわですね。
甲府~静岡の所要時間が高速バスに逆転されてしまうとなると、あとは料金で勝負するしかなさそうです。現在、「ふじかわ号自由席特急回数券」が4枚14,800円(1枚あたり3,700円)で発売されていますが、高速バスに対抗するために、回数券の値下げや、より割引率の高いきっぷを発売するかもしれません。
もっとも、高速バスの本数が増え、所要時間も料金でも不利ということになれば、特急ふじかわの減便もあり得そうです。
以上、『中部横断自動車道の六郷IC~新清水JCTが2019年度中に全線開通予定! 身延線特急「ふじかわ」はどうなる!?』でお届けしました。中部横断自動車道が全線開通したときに、高速バスがどのくらい設定されるのか、それによって、特急ふじかわに影響が出てくるかもしれません。
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身延線の特急「ふじかわ」の乗車レポートです。
青春18きっぷで身延線を訪問してみてはいかがでしょうか。身延山や富士宮の浅間大社、車窓から見える富士山なども紹介しています。
長坂JCT~佐久小諸JCTも「中部横断自動車道」として計画され、八千穂高原IC~佐久小諸JCT間は開通済みです。↩
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