JR北海道とJR九州が、相次いで車内販売の廃止・終了を発表しました。JR九州に至っては、九州新幹線全列車での車内販売廃止です。在来線特急列車での車内販売が残るのは、首都圏の主要な特急列車に加えて、「いなほ」「しおかぜ」「南風」のみとなり、いまや風前の灯です。
JR北海道・JR九州が車内販売の廃止を発表!
JR北海道・JR九州は、車内サービスの廃止を発表しました。
今回、客室乗務員による車内販売・車内サービスが廃止されるのは、以下の路線・列車です。
- JR北海道: 2019年2月28日で「スーパー北斗」の一部列車でのみ実施している車内販売を終了。これで、全列車の車内販売が終了となる。
- JR九州: 2019年3月15日で九州新幹線全列車の車内販売とグリーン車サービス(おしぼり配布等)を終了。これで、D&S列車(観光列車)を除く新幹線・特急列車での車内販売が終了となる。
これで、観光列車を除いては、JR北海道、JR九州の新幹線・特急列車からは、車内販売がすべて廃止されることになります。
車内販売実施中の路線・列車リスト(2019年3月以降)
以前は、新幹線や特急列車といえば、ほとんどの列車で車内販売が実施されていたものですが、徐々に廃止されていき、現在では数えるほどしか実施されていません。特に、在来線の特急列車の車内販売は風前の灯火です。
現在、車内販売が実施されているJR各社の路線・列車(観光列車を除く)は以下の通りです。
路線 | 列車 | 備考 | |
---|---|---|---|
JR北海道 | 函館本線等 | スーパー北斗 一部列車 | 2月28日で終了 |
JR東日本 | 東北新幹線 | はやぶさ・はやて・やまびこ | |
山形新幹線 | つばさ | ||
秋田新幹線 | こまち | ||
上越新幹線 | とき | ||
北陸新幹線 | かがやき・はくたか | ||
羽越本線等 | いなほ | ||
東海道本線等 | スーパービュー踊り子 踊り子 |
||
中央本線等 | あずさ・かいじ | ||
常磐線 | ひたち | ||
東北本線等 | 日光・きぬがわ | ||
高崎線・吾妻線 | 草津 | ||
首都圏各線 | 普通列車グリーン車 | ||
JR東海 | 東海道新幹線 | のぞみ・ひかり | |
JR西日本 | 山陽新幹線 | のぞみ・ひかり みずほ・さくら |
|
北陸新幹線 | かがやき・はくたか | ||
JR四国 | 瀬戸大橋線等 | しおかぜ・南風 | |
JR九州 | 九州新幹線 | みずほ・さくら | 3月15日で終了 |
※上記の全ての列車で車内販売が実施されているわけではなく、一部列車では実施されていません。詳しくは、会社名の欄をクリックし、各社の車内サービスの状況をご確認ください。
新幹線では、速達列車を中心に車内販売のサービスを実施していますが、今回、九州新幹線の区間では車内販売が廃止となります。
一方、在来線特急列車で車内販売が残っているのは、首都圏の主要な特急列車と、JR東日本の「いなほ」、JR四国の「しおかぜ」「南風」だけです。
首都圏に住んでいると、主要な新幹線・特急列車では車内販売が実施されているため、それが普通だと思いがちですが、全国的にみれば、車内販売がない特急列車のほうが、圧倒的に多いのですね。
車内販売中止は特急列車のサービス低下
現在では、高頻度で運転されていて、ビジネス客も多いはずの特急列車でも、車内販売が実施されていません。「カムイ」「ライラック」(札幌~旭川)、「サンダーバード」(大阪~金沢)、「かもめ」(博多~長崎)などは、1時間に1~2本程度運転されているにもかかわらず、全ての列車で車内販売が実施されていません。
経営難に陥っているJR北海道は仕方がないにしても、看板列車であるはずの九州新幹線でも車内販売をやめてしまうJR九州はどうなんでしょうか?
JR北海道のリリースでは、
コンビニエンスストアやペットボトル等の普及により、車内販売のご利用は年々減少傾向にありました。
(出典)客室乗務員による車内サービスの終了について(JR北海道ニュースリリース 2019年1月24日)
と書かれています。駅ナカなどで駅弁や飲み物がいろいろ手に入るようになりましたので、この理由はわからないでもありません。
とはいえ、車内販売や車内サービスを、それ単体のビジネスとしてしか見ていないのではないかとも思えます。そのために、車内販売を実施しても(車内販売という事業が)赤字だから廃止する、という判断になったのでしょう。
本来、車内販売は、新幹線や特急という優等列車のサービスであるはずで、それを廃止するということは、利用者の立場から見れば、単純に「鉄道のサービス低下」と受け取られかねません。
1時間程度の乗車時間であれば不要かもしれませんが、例えば、「スーパー北斗」の札幌~函館間の所要時間は3時間半以上、「サンダーバード」の大阪~金沢は2時間半以上かかります。この間、お茶やコーヒーの1本も購入できないというのは、優等列車のサービスとしてはどうなのでしょうか?
一部列車の車内販売中止が悪循環を生み出したかも?
再度、JR北海道のリリースから引用してみます。
これまで車内サービスを継続するため、ご利用の少ない列車での車内サービスを取りやめることで収支改善を図ってまいりましたが、事業として赤字解消には至っておりません。
(出典)客室乗務員による車内サービスの終了について(JR北海道ニュースリリース 2019年1月24日)
利用者から見ると、安心して車内販売を利用するためには、「たいていの特急列車で車内販売がある」ことが重要なのではないでしょうか。車内販売がある列車とない列車があると、「もし車内販売がなかったら食事を取り損ねるから、駅で買っておこう」となるのは当然の成り行きです。
つまり、一部列車での車内販売の中止 → 「たいていの特急列車で車内販売がある」状況ではなくなる → 安心して車内販売を利用できなくなる → 利用者が減って、さらに多くの列車で車内販売を中止、という悪循環に陥ってしまったのではないでしょうか。
車内販売は、鉄道ならではのサービスだと思っていたので、車内販売単体の事業として成り立たないから廃止、という結果になってしまったことは残念でなりません。
以上、『JR北海道・JR九州が車内販売を廃止! 在来線特急の車内販売は首都圏と「いなほ」「しおかぜ」「南風」だけに!』でお送りしました。このぶんだと、新幹線以外での車内販売が消えるのも時間の問題でしょう。旅行でも出張でも、列車内での食事というのは特別なものなので、なんとか知恵を絞って残してほしいと思います。