JR北海道が平成28年度の決算を発表しました。台風被害による減収が響き、経常損益が188億円の赤字になるという厳しいものでした。同時に発表されたご利用状況(輸送密度)は、JR北海道全体では北海道新幹線開業の効果もあり、前年度比104.5%と増加しましたが、単独で維持困難とされた線区では5~10%程度減少しており、厳しい結果となりました。
維持困難線区の輸送密度の減少が続く
JR北海道が平成28年度の決算を発表しました。
平成28年度決算について【PDF/241KB】(JR北海道プレスリリース 2017年5月9日)
この中で、平成28年度の線区別の輸送密度が発表されています。
平成28年度 | 対前年比 | ||
---|---|---|---|
全線 | 全期間 | 5,177人 | 101.6% |
8か月 | 5,323人 | 104.5% | |
500人未満 | 全期間 | 372人 | 92.1% |
8か月 | 381人 | 94.3% | |
500~2000人 | 全期間 | 1,002人 | 89.7% |
8か月 | 1,022人 | 91.5% |
全線、輸送密度500人未満の線区、輸送密度500~2000人の線区のそれぞれの平均を表にしてみました。
なお、昨年8月末に台風被害で根室本線や石北本線、宗谷本線の一部が長期間運休となったことから、今回の発表では、台風被害により運休が発生していた9~12月を除く8か月分の輸送密度と対前年比も掲載されています。
北海道新幹線の開業効果でJR北海道全体ではプラス
JR北海道全体では対前年比でプラス となっていますが、これは北海道新幹線の開業効果によるものです。
北海道新幹線の輸送密度のデータを抜き出してみると、以下のようになります。
- 平成28年度(全期間): 5,638人(対前年比 152.1%)
対前年比は、北海道新幹線開業前の海峡線(木古内~中小国)との比較です。乗客数が約1.5倍に伸びており、輸送密度の比較的高い区間で大幅に伸びた結果、JR北海道全線でのプラスにつながっているものと考えられます。
これに加えて、在来線でも函館本線(函館~長万部)が対前年比108.8%と伸びています。こちらは、新函館北斗~函館の函館ライナーの乗客増によるものでしょう。
輸送密度の低い線区ほど減少傾向に
一方で、JR北海道が単独で維持困難として発表した線区(おおむね輸送密度2000人未満の線区)では、台風被害の影響を除いた期間のデータでも、輸送密度500人未満の線区の平均で94.3%、輸送密度500~2000人の線区の平均で91.5%となっていて、約5~9%も乗客数が減っている ことがわかります。たった1年でこれだけ乗客が減ってしまうというのも、本当に驚きです。
特に落ち込みが激しい線区(台風被害を除く8か月分のデータで対前年比90%以下の線区)を抜き出してみます。
- 札沼線(北海道医療大学~新十津川): 64人(対前年比 81.0%)
- 石勝線(夕張~新夕張): 80人(対前年比 67.8%)
- 根室線(滝川~富良野): 432人(対前年比 88.5%)
- 石北線(上川~網走): 913人(対前年比 86.1%)
- 石北線(新旭川~上川): 1,262人(対前年比 85.2%)
石勝線の夕張~新夕張は、既に地元自治体がバス転換受け入れを表明していますので、その影響があるのでしょう。それ以外の線区は、特にこれと言って乗客数が大幅減になる理由はないはずですが、実際にはかなり厳しい結果になっています。
石北線は全線で15%近くも乗客が減ってしまっています。台風被害での運休が解消した後も、乗客が鉄道に戻っていないことが懸念されます。今年3月のダイヤ改正後のデータは1か月分しか算入されていないはずですが、旭川で特急系統が分断された影響も少しあるのかもしれません。
輸送密度2000人未満の営業キロ割合は56%!
JR北海道が発表した決算資料には、輸送密度別の営業キロ割合の数値も掲載されています。
- 輸送密度 500人未満: 営業キロ割合 34%
- 輸送密度 500人~2000人: 営業キロ割合 22%
大赤字の輸送密度2000人未満の路線が、JR北海道全体の56%を占めているのです。収入は輸送密度に比例し、線路等設備の維持コストはおおむね営業キロに比例しますから、設備維持コストの半分をこれらの大赤字路線を維持するために支払っている と言えるでしょう。これは非常に厳しいと思わざるを得ません。
今年度も厳しい状況が続くかも?
平成28年度は北海道新幹線の開業効果のおかげで、JR北海道全体としては輸送密度は増加しました。ただ、それでも、決算としては過去最大の赤字でした。平成29年度は、北海道新幹線の開業効果が薄れることが想定されますので、昨年度同様に厳しい状況が続くものと思います。
これらのデータを見る限りでは、JR北海道の経営改革は待ったなしの状況であることがわかります。単独で維持困難な線区については、一部の路線で沿線自治体や北海道との協議が始まっていますが、できる限り早い段階で建設的な議論を進めないと、取り返しのつかない状況になってしまうかもしれませんね。