ひさの乗り鉄ブログ

青春18きっぷの話題をはじめ、観光列車や風光明媚な路線の乗車記などを思うままに綴っていく乗り鉄ブログです。

釧網本線「くしろ湿原ノロッコ」の利用が好調! 課題は札幌・新千歳空港からの周遊ルート!


JR北海道が夏季に運転しているトロッコ列車「くしろ湿原ノロッコ号」の利用状況を発表しました。2019年の利用は好調で、1日平均611名もの利用がありました。たった2往復のトロッコ列車で、定期客を含む同区間の平均乗車人員と同規模の利用実績があったことになります。JR北海道の乗客を増やすうえで、観光客は非常に大きな存在になっているようです。

JR北海道が2019年の「くしろ湿原ノロッコ号」の利用実績を発表!

JR北海道は、4月~10月に釧網本線の釧路~塘路間で運転しているトロッコ列車「くしろ湿原ノロッコ号」の2019年の利用実績を発表しました。

過去4年間の利用実績を見てみると、以下のようになります。(過去のJR北海道のニュースリリースより引用)

2016年 2017年 2018年 2019年
運行日数 106日 132日 122日 142日
合計乗客数 59,692人 77,285人 67,698人 85,596人
一日平均
乗客数
563人 590人 555人 611人


ここ4年間では全体として増加傾向にありますが、2019年は好調さが際立っています。

なお、2018年は、北海道胆振東部地震(9月6日発生)のために運転日数が少なくなったこと、全道での停電の影響で旅行を控えた人が少なからずいたことが影響していると思われます。

釧網本線を走る「くしろ湿原ノロッコ号」とは?

「くしろ湿原ノロッコ号」は、4月~10月の観光シーズンに、釧網本線の釧路~塘路(とうろ)間で運転されているトロッコ列車です。

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4両のトロッコ客車をディーゼル機関車が引いていきます。4両のうち1両は普通客車で、窓があり、車内にはボックスシートが並びますが、残りの3両は窓が取り外せるトロッコ車両です。

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「くしろ湿原ノロッコ号」は、その列車名のとおり、釧路湿原と、釧路湿原を流れる釧路川の車窓を眺めるための列車です。終点の塘路駅や、途中の釧路湿原駅では、釧路湿原の散策を楽しむこともできます。

6月~9月中旬は2往復、4~5月と9月中旬~10月中旬までは1往復が運転されています。所要時間は釧路~塘路で約50分ほどです。

東釧路~塘路の3分の1は「くしろ湿原ノロッコ号」の乗客!

2019年の「くしろ湿原ノロッコ号」の利用者数は、1日平均で611人。これがどのくらいの数字なのかを知るために、JR北海道が公開している釧網本線の利用状況を見てみましょう。

まずは、1日あたりの駅間通過人員(平成30年度,単位[人])です。

駅間 定期外 定期 合計
東釧路~遠矢 497 194 691
遠矢~釧路湿原 490 193 683
釧路湿原~細岡 472 193 665
細岡~塘路 471 193 664
塘路~茅沼 284 190 474
茅沼~標茶 283 188 471

(出典)駅間通過人員(線区データ/線区別のデータ/釧網線) PDFファイル


「くしろ湿原ノロッコ号」が走る東釧路~塘路間は、定期・定期外を含めて、1日あたり平均(上下含めて)約600~700人くらいの乗車があります。

これに対して、「くしろ湿原ノロッコ号」の利用実績は、1日あたり611人ですから、同じ区間の乗客数が倍になるくらいの貢献をしている、と見ることができます。

もう少し正確に計算してみましょう。

東釧路~遠矢間の1年間の乗客数(2018年度)は、

  • 691人×365日=252,215人

となります。

「くしろ湿原ノロッコ号」の2019年の利用者数は85,596人ですから、2019年度の東釧路~遠矢間の乗客数が変わらないとしたら、

  • 85,596 / 252,215 = 約33.9%

となります。

つまり、「くしろ湿原ノロッコ号」の乗客が、年間の乗客数の約3分の1を占めていることになります

釧網本線の活性化には観光客の利用が欠かせない!

JR北海道は、同社の約半分の路線を「単独では維持困難な路線」としてあげていますが、釧網本線もその一つです。

釧網本線が他の路線と大きく異なるのは、沿線に釧路湿原、阿寒湖・摩周湖・屈斜路湖などを含む阿寒摩周国立公園、冬に流氷で埋め尽くされるオホーツク海、そして、世界遺産、知床など、豊富な観光資源があることです。

一方で、ただでさえ少ない沿線の人口は、過疎化・少子化により年々確実に減り続けていて、釧網本線の乗客数も減少傾向です。

「くしろ湿原ノロッコ号」の利用実績や、釧網本線の乗客数に占める割合などを見るにつけ、釧網本線を存続させるには、いかに観光客に利用してもらうか、この一点に尽きるでしょう。

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JR北海道としても、それはわかっていて、同社で数少ない観光列車のリソースを、釧網本線に振り向けています。

  • 「くしろ湿原ノロッコ号」(釧路~塘路)
  • 「SL冬の湿原号」(釧路~標茶)
  • 「流氷物語号」(網走~知床斜里)

JR北海道唯一のSL列車を、冬季の釧網本線に走らせていますし、オホーツク海沿岸の区間にも「流氷物語号」を走らせています。釧網本線以外で、JR北海道が定期的に運行する観光列車は、富良野線の「富良野・美瑛ノロッコ号」くらいです。

ただ、残念なのは、いずれも比較的距離が短いところでしょうか。それに、釧網本線の中ほどにある阿寒摩周国立公園へアクセスする観光列車がないのですね。夏季の観光シーズンには、「くしろ湿原ノロッコ号」を摩周駅や川湯温泉駅まで運転してもよさそうですし、別の観光列車を投入してもよさそうです。

釧網本線の課題は観光列車を含む周遊ルートの構築

釧網本線の観光列車の利用は好調なのですが、前述のように運転距離が短いために、収入という観点では焼け石に水という状況です。

2017~2018年度の釧網本線の収支状況は、以下の通りです。

収入 費用
2017年度 286百万円 1,783百万円
2018年度 288百万円 1,736百万円

(出典)駅間通過人員(線区データ/線区別のデータ/釧網線) PDFファイル

「くしろ湿原ノロッコ号」の乗客が、仮に全区間、指定席券を購入して乗車したとすると、

  • 指定席券520円+乗車券540円=1,060円(2019年9月までの値段)
  • 2019年の乗客数 85,596人 × 1,060円 = 約90.7百万円

となります。

2018年度の釧網本線の収入が288百万円ですから、収入に対する「くしろ湿原ノロッコ号」の貢献はかなり大きいのですが、費用(1,736百万円)と比べると、黒字化はほとんど不可能のように思えます。

そこで重要なのが、札幌や旭川などの大都市からの周遊ルートの構築です。

札幌や旭川から、釧路や網走まで、特急列車に乗ってきてもらえば、釧網本線単体では赤字だったとしても、特急列車の運賃+特急料金の収入が得られますから、釧網本線の存在が活きてくるわけです。

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成功例の一つが、JR東日本の五能線です。五能線は超赤字ローカル線ですが、観光列車「リゾートしらかみ」が1日に3往復も走る観光路線になりました。もともと日本海の車窓が素晴らしい路線ではありましたが、東北新幹線が青森へ、秋田新幹線が秋田へと到達したことで、

  • 首都圏(東北新幹線)青森(五能線・リゾートしらかみ)秋田(秋田新幹線)首都圏

という周遊ルートが完成しました。

今でも五能線単体ではかなりの赤字だと思いますが、五能線へのアクセスに新幹線を使ってもらえれば、トータルでプラスになるということなのでしょう。

道東周遊ルート構築には「乗ること」を目的とした観光列車が必要?

札幌から釧網本線を経由する周遊ルートを作ろうとすると、

  • 札幌(スーパーおおぞら)釧路(釧網本線)網走(オホーツク)札幌

というルートになります。

ところが、道東を観光したい観光客は、このようなルートを使わず、釧路空港や女満別空港を利用します。東京(羽田)・大阪(関西)からは釧路空港に飛んでいますし、東京(羽田)・名古屋(中部)からは女満別空港への便があります。

首都圏から、五能線「リゾートしらかみ」に接続する青森や秋田までの新幹線のシェアが高いJR東日本と比較して、JR北海道はその点で不利なのは否めません。

しかも、数年前の特急列車の火災事故等をきっかけに、JR北海道は特急列車の速度を下げてしまい、札幌~網走間は5時間以上、札幌~釧路は4時間半弱もかかります。

速度向上が容易でないとすると、所要時間ではなく、「あえて列車に乗ってもらう」ための車両、観光列車が必要になりそうです。

JR北海道は、観光列車にも利用できる特急車両「261系5000番代」を2編成製造すると発表しています。

www.kzlifelog.com

このような列車を、新千歳空港に到着した観光客が利用しやすい時間帯に、釧路や網走に向けて走らせる必要がありそうです。

また、北海道は海外からの観光客にも人気です。その多くは、国際空港である新千歳空港に到着します。このようなインバウンドをターゲットにして、道東周遊ルートを売り込む戦略もありそうです。


以上、『釧網本線「くしろ湿原ノロッコ」の利用が好調! 課題は札幌・新千歳空港からの周遊ルート!』でした。観光資源では日本でも随一のものがある北海道ですから、観光列車を増やしつつ、札幌や新千歳空港からも鉄道でアクセスしてもらえるような施策が必要ですね。