昨年から運賃値上げの意向を示していたJR北海道ですが、運賃の平均値上げ率は13.6%となり、消費税増税分の2%と合わせて、約15.7%の値上げとなることがわかりました。一方、北海道新幹線の運賃と、在来線を含む特急料金については値上げしない方向だそうです。今回の値上げで初乗り運賃は170円から200円へと引き上げられます。
この記事では、JR北海道の運賃の値上げについての影響を詳しく見ていきます。
※2019.05.10更新(JR北海道が申請した運賃値上げの情報を追加)
JR北海道が運賃値上げを申請
JR北海道は、2019年10月の消費税増税と合わせて、運賃の値上げを実施する予定です。2019年5月10日に、運賃の値上げを、国土交通大臣に認可申請しました。その値上げ幅は、以下のようになります。
- 平均値上げ幅(旅客運賃収入全体)は9.1%、消費税増税分と合わせて11.1%の値上げ
- 普通運賃は平均で13.6%(消費税増税分を合わせて15.7%)の値上げ
- 初乗り運賃は170円から200円へ値上げ
- 北海道新幹線の運賃は据え置き
- 特急料金も据え置き
- 通勤・通学定期券の割引率は据え置き(運賃自体が上がるため値上げになる)
JR北海道は、昨年から、運賃の値上げを実施することを計画していました。
昨年から計画されていたとおり、運賃値上げによる増収は約40億円になるようです。
100kmまでは値上げ幅が大きい! 3割以上値上げの区間も!
JR北海道の運賃の値上げ幅は、前述の通り、消費税増税分の2%を合わせて、全体で15.7%となります。
ところが、その中身を見てみると、距離によって、値上げ幅がかなり異なります。それは、運賃の値上げ幅を、以下の3段階に分けているためです。
- ~100kmまで: 賃率によらない「対キロ区間制運賃」を導入
- 101km~200km: 賃率を従来の1.1倍に引き上げ(運賃=賃率×距離)
- 201km~: 201km以上の賃率は据え置き(運賃=200kmまでの運賃+賃率×200㎞を超えた距離)
「賃率」というのは、1kmあたりの運賃のことで、乗車距離が長くなるほど下がる仕組みになっています。
注目は、100kmまでは、従来の「賃率」による運賃計算をやめ、乗車距離の区分ごとに運賃を設定している点です。JR北海道が公表した値上げ後の普通運賃旅客表を見ると、この100kmまでの値上げ幅がかなり大きくなっているのがわかります。
100kmまでのすべての距離区分と、101km以上のいくつかの距離区分の現行運賃と改定後の運賃、値上げ幅をまとめてみました。
100kmまでの値上げ幅がかなり大きいことがわかります。初乗り運賃は17.6%の値上げですが、7~10kmは31.8%、11~15kmは30.8%と、値上げ幅が大きくなっています。7~10kmは札幌~発寒・平和間、11~15kmは札幌~手稲・新札幌間にあたりますので、定期券利用者が多そうな区間になります。定期券の割引率は据え置かれますが、元の運賃が3割上がってしまうと、定期券も3割の値上げになります。
一方、101km以上の長距離は、距離が長くなるほど値上げ幅は小さくなります。
全般的に、短距離の値上げ幅を大きくして、定期券収入を増やすことで、確実に増収につなげようとしていることがわかります。
初乗りは200円へ!
JR線の初乗り運賃が200円になるというのは、かなりインパクトがあります。
現在のJRの初乗り運賃は、以下の通りです。
- JR北海道: 170円(1~3キロ)
- JR九州・JR四国: 160円(1~3キロ)
- JR東日本・JR東海・JR西日本: 140円(1~3キロ)
- 東京電車特定区間: 140円(1~3キロ)
- 大阪電車特定区間: 120円(1~3キロ)
JR北海道、JR四国、JR九州の3社は、分割民営化後に値上げをしていますので、本州3社よりも運賃が高くなっています。
2019年10月のJR北海道の運賃値上げで、初乗り運賃が170円から200円になります。他のJR旅客会社の運賃と比べても、際立って高くなります。
最も安いJR西日本の大阪電車特定区間(120円)と比べると約1.7倍、本州3社の初乗り運賃(140円)と比べても約1.4倍です。
高速バスと対抗上、特急料金は据え置き
一方で、北海道新幹線の運賃・特急料金と、在来線特急の特急料金は据え置きされる方針です。
北海道新幹線は、運賃・料金が高く、利用が伸び悩んでいますし、航空機との競争対抗上、値上げするわけにはいかないのでしょう。
在来線特急については、札幌から道内各都市への高速バスとの対抗上、こちらも値上げは難しいのでしょう。現在でも、「Sきっぷ」「Rきっぷ」といった往復割引きっぷや、「えきねっとトクだ値」などの割引きっぷが恒常的に発売されています。
- 札幌~旭川: Sきっぷ(約4割引き)、えきねっとトクだ値(45%引き)
- 札幌~釧路: えきねっとトクだ値(15~40%引き)
- 札幌~函館: えきねっとトクだ値(15~30%引き)
さらには、期間限定ですが、50%~55%引きというきっぷも発売されています。
これでようやく高速バスに対抗できる価格になるわけですから、安易に値上げをすれば、高速バスに乗客を奪われて、収入減となってしまうわけです。
現実的には、運賃を値上げすることで定期券収入を確実に増やしつつ、北海道新幹線や在来線特急列車は需要や競争対抗上、割引きっぷで柔軟な値付けができるようにしておく、というのが、JR北海道の戦略なのでしょう。
旅行者にとって気になる区間の運賃は?
旅行者にとって、観光で移動する区間の運賃はどうなるでしょうか?
区間 | 現行 | 改定後 | 値上げ幅 | 備考 |
---|---|---|---|---|
札幌~函館 | 8,830円 | 9,440円 | 6.9% | 特急指定席 |
札幌~旭川 | 4,810円 | 5,220円 | 8.5% | 特急指定席 |
札幌~釧路 | 9,370円 | 9,990円 | 6.6% | 特急指定席 |
札幌~網走 | 9,910円 | 10,540円 | 6.3% | 特急指定席 |
札幌~稚内 | 10,450円 | 11,090円 | 6.1% | 特急指定席 |
札幌~ 新千歳空港 |
1,070円 | 1,150円 | 7.4% | 運賃のみ |
札幌~小樽 | 640円 | 750円 | 17.2% | 運賃のみ |
新函館北斗 ~函館 |
360円 | 440円 | 22.2% | 運賃のみ |
特急料金が据え置き(消費税増税分のみ値上げ)であることと、長距離の運賃は値上げ幅が小さいことで、札幌から道内主要都市への特急列車の料金(運賃+指定席特急料金)の値上げ幅は6~8%程度です。このうち、約2%は消費税増税分ですから、実質的には4~6%程度の値上げということになります。
一方、札幌~小樽や、新函館北斗~函館など、短距離は、前述の通り値上げ幅が大きくなっています。もっとも、旅行で訪れるときに利用するだけであれば、せいぜい数十円の値上げなので、さほど気にすることはないでしょう。
以上、『JR北海道が2019年10月の運賃値上げを申請、約11%の値上げへ! 北海道新幹線と特急料金は据え置き』でした。利用者の立場としては運賃の値上げはないに越したことはありませんが、それで路線を維持できなくなってしまっては、どうしようもありません。この値上げを機に、観光客を含め、積極的に鉄道を使ってもらえるような攻めの施策を実施していってほしいものです。