JR東日本は、Suica等の交通系ICカードの残額で、同社の新幹線の普通車自由席に乗車できるサービス「タッチでGo! 新幹線」を2018年4月に開始すると発表しました。乗車券や特急券を事前に購入せずに新幹線に乗車できるサービスは初めてです。短距離の新幹線の利用が便利になりそうです。
Suicaでそのまま新幹線に乗車可能! 「タッチでGo! 新幹線」を開始
JR東日本は、2018年4月に「タッチでGo! 新幹線」を開始すると発表しました。
「タッチでGo!新幹線」の開始について ~新幹線もタッチ&ゴー、新幹線の新しい乗車スタイル~ (JR東日本プレスリリース 2017年12月5日 [PDF/125KB])
上記のプレスリリースで発表されたサービスの概要は以下の通りです。
- JR東日本の新幹線の普通車自由席に、事前に乗車券や特急券を購入せずに乗車できるサービス
- 適用される運賃・料金は、乗車券と特急券がセットになった新幹線専用商品
- 在来線との乗車券の通算はできない(在来線から新幹線に乗り継ぐ場合や、新幹線から在来線に乗り継ぐ場合は、在来線の乗車券が別途必要となる)
- 対象エリアは、以下の路線・区間の新幹線停車駅相互間(おおむね関東地方内の駅)
- 東北新幹線: 東京~那須塩原
- 上越新幹線: 東京~上毛高原
- 北陸新幹線: 東京~安中榛名
- 大宮駅での東北・上越新幹線の乗り継ぎと、高崎駅での上越・北陸新幹線の乗り継ぎは対象外
サービス開始は、2018年4月1日となっています。
事前にきっぷ購入なしで乗車できるのは画期的!
ICカードで新幹線に乗車できるサービスとしては、JR東海の「EX-ICサービス」や、JR東日本の「モバイルSuica特急券」があります。チケットレスサービスと称して、事前に紙のきっぷを受け取ることなく、新幹線に乗車できるサービスです。
それでは、今回、JR東日本が発表した「タッチでGo! 新幹線」は、何が違うのでしょうか?
大きく違うのは、事前にきっぷ(乗車券や特急券)を購入することなく新幹線に乗車できる という点です。
- 従来のICカードでの乗車: 事前にインターネット等で乗車券・特急券を購入し、購入したきっぷの情報をICカードに記録
- 「タッチでGo! 新幹線」: 事前にきっぷを購入することなく、チャージ残高で新幹線に乗車可能
このように、従来のICカードでの乗車では、きっぷの購入という行為自体は必要で、紙のきっぷを受け取る必要がないだけでしたが、「タッチでGo! 新幹線」では、きっぷを購入するという行為自体が不要となる 点で画期的なのです。
とはいえ、都市圏の在来線では当たり前になっているこのサービス、ようやく新幹線にも対応した、という言い方のほうがしっくりくるかもしれませんね。
在来線乗り継ぎは若干高くなる可能性も…
今回の発表では、ICカードから差し引かれる金額は、「タッチでGo! 新幹線」専用の、乗車券と特急券がセットになった商品 となっています。わかりにくいですが、新幹線区間で完結している乗車券と特急券ということです。
つまり、在来線から新幹線へ乗り継ぐ場合や、新幹線から在来線へ乗り継ぐ場合は、在来線の乗車券を別途購入する必要がある ということになります。Suicaが利用できる在来線であれば、そのままSuicaをタッチするだけでシームレスに乗り継ぎができると思いますが、乗車券の購入区間は、
- 在来線乗車駅~新幹線乗車駅(在来線の乗車券)
- 新幹線区間(「タッチでGo! 新幹線」専用商品)
- 新幹線下車駅~在来線下車駅(在来線の乗車券)
の3区間に分離されることになります。
「タッチでGo! 新幹線」の専用商品の価格が、新幹線区間の乗車券+自由席特急券をふつうに購入した場合と同額であるとすると、在来線区間も含めた総額が、若干高くなる可能性もあります。
というのは、一般的には、
- 乗車券が長距離になるほどキロあたりの運賃が逓減する(遠距離逓減制)
- 乗車券を分離して購入した区間ごとに、初乗り料金がかかる
という仕組みになっているためです。(一部例外除く)
それほど大きな差にはならないとは思いますが、在来線と新幹線を乗り継ぐ場合には、覚えておいたほうがよいと思います。
事前予約なら「えきねっと」や「モバイルSuica特急券(モバトク)」がおトク
「タッチでGo! 新幹線」は、きっぷを事前に予約・購入しないサービスであることから、乗車できるのは普通車自由席に限られます。短距離での自由席利用ということからも、当日、急に新幹線に乗車することになったときに、気軽に乗車できるサービスを目指しているものと思います。
一方で、事前に旅行することが分かっている場合には、「えきねっと」や「モバイルSuica特急券」の事前購入割引サービスを利用するのがおすすめ です。指定席の購入もできますし、前日までの購入で割引料金が適用される「えきねっとトクだ値」や「スーパーモバトク」といったサービスもあるからです。
一例として、東京~宇都宮の料金を比較してみます。(「タッチでGo!新幹線」の料金は正式には発表されていませんが、プレスリリースには東京~宇都宮の料金例が記載されているため、この区間で比較します。)
きっぷの種類 | 座席種別 | 料金 | 備考 |
---|---|---|---|
乗車券+自由席特急券 | 普通車自由席 | 4,410円 | |
タッチでGo!新幹線 | 普通車自由席 | 4,210円 | キャンペーン料金 (当分の間) |
モバトク | 普通車指定席 | 4,210円 | 通常期の料金 |
スーパーモバトク | 普通車指定席 | 3,560円 | 通常期の料金 前日までに購入 |
えきねっとトクだ値 | 普通車指定席 | 4,180円 | 通常期の料金 前日までに購入 なすの利用 |
「タッチでGo!新幹線」は、モバトクやえきねっとトクだ値とあまり変わらないように思えますが、後者は指定席利用ですので、その差額分おトクということになります。それに、前日までの購入なら、スーパーモバトクがかなりおトクです。
モバイルSuicaを利用している方は、当日購入でも、手元のスマートフォンで「モバトク」料金で指定席を購入できますので、面倒でなければこちらのほうがよさそう です。
青春18きっぷでの「ワープ」には便利かも?
いきなり話が乗り鉄視点になりますが、この「タッチでGo!新幹線」のサービスは、青春18きっぷで旅をしているときに、一部区間だけ新幹線に乗る(いわゆる「ワープ」)場合に便利かもしれません。
前後の在来線は青春18きっぷで乗車するわけですから、乗車券が通算で高くなる心配はありませんし、きっぷを購入しなくても、チャージしたSuicaさえあれば、そのまま新幹線の改札を通れるのも便利そうです。
「タッチでGo!新幹線」の料金はまだ発表されていませんが、ふつうに乗車券+自由席特急券を購入した場合と同等の料金になるのであれば、新幹線の隣接駅間の特急料金が割安に設定されている「特定特急券」の制度も適用されるのではないかと思います。そうなれば、乗り継ぎの悪い一駅区間だけ新幹線に乗車する、ということが気軽にできそうです。
もっとも、あまり気軽に利用してしまうと、青春18きっぷで旅行している意味がなくなってしまいますが…
2019年度末には指定席用のサービスも開始?
プレスリリースの最後に、
指定席につきましても、2019年度末を目途にICカードでシームレスにご利用いただけるサービ スの導入を検討しております。詳細につきましては今後お知らせいたします。
※出典: 「タッチでGo!新幹線」の開始について ~新幹線もタッチ&ゴー、新幹線の新しい乗車スタイル~ (JR東日本プレスリリース 2017年12月5日 [PDF/125KB])
という記載があります。
指定席でも、今回の「タッチでGo!新幹線」と同様のサービスを提供するということですが、どのようなサービスになるのか、こちらも気になります。
おそらく、JR東海の「EX-ICサービス」と同様のサービスを、SuicaのICカードだけで実現するのではないかと思いますが、どうでしょうか? もっとも、これだけなら、「モバイルSuica特急券」で実現できているので、あまり新鮮味はないのですが…。
以上、JR東日本が2018年4月の導入する予定の「タッチでGo!新幹線」サービスについてご紹介しました。料金的な魅力はなさそうですが、今まで以上に気軽に新幹線を利用できるようになるという意味で、画期的なサービスになりそうですね。