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音威子府村の広報誌で「鉄道、必要ですか?」が話題に! 沿線人口が激減する宗谷本線をどのように維持していくべきか?

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線路

JR北海道が「単独で維持困難な線区」の一つとしてあげている宗谷本線の名寄~稚内。少し前に、沿線の音威子府村の広報誌「おといねっぷ」で、「鉄道、必要ですか?」という特集が組まれ、話題になりました。過疎化が急速に進んでいる宗谷本線の沿線ですが、国策上必要であるという指摘もあります。今後、宗谷本線をどのように維持していくべきなのでしょうか。

かつての交通の要衝、音威子府駅

宗谷本線(旭川~稚内)のほぼ中間地点に、音威子府(おといねっぷ)という駅があります。かつては、オホーツク沿岸を経由して稚内へと延びる天北線(平成元年に廃止)との分岐駅であり、道北の交通の要衝でもありました。現在も、宗谷本線の特急停車駅ですし、天北線から転換されたバス路線への乗り換え駅という意味で、要衝ではあります。

そんな音威子府駅があるのは、北海道で最も小さな村(最も人口の少ない村)、音威子府村です。人口が1000人に満たない村です。

音威子府村の広報誌で「鉄道、必要ですか?」の問いかけが話題に!

その音威子府村の広報誌「おといねっぷ」の2017年7月号(No.514)に「鉄道、必要ですか?」という特集が組まれ、ネットのニュースなどでも取り上げられて話題になりました。

www.vill.otoineppu.hokkaido.jp

この特集タイトルや、ネットでの取り上げられ方からは、「鉄道、必要ですか?」→「必要じゃないよね」と受け取られていたようですが、実際に広報誌を読んでみると、そこまで鉄道(宗谷本線)に対して否定的な内容ではありませんでした。

特集の概要をざっと記すと、以下のようになります。

  • 鉄道の街、音威子府。宗谷本線開通から今まで
    • 宗谷本線の開業とともに音威子府村も発展、昭和20~30年代には「国鉄の街」として最盛期を迎えるも、平成元年の天北線の廃止による村への影響は非常に大きなものに
  • 北海道の鉄道の現状
    • JR北海道が発表した「当社単独では維持することが困難な線区」と、音威子府村にある4駅の状況について
  • これからの鉄路のあり方は…互いに支えあうマイレール
    • 道内の他の路線を支える取り組みを紹介(釧網本線、道南いさりび鉄道)
  • 宗谷本線、本当に必要ですか?
    • 鉄道会社のあり方、公共交通としての位置づけなどの議論はあるが、まずは沿線住民が「宗谷本線、本当に必要ですか?」を考えてみることが何よりも重要
    • 要望・要求も大事だが、まずは、入場券を買ってみる、たまに鉄道を使ってみるといった、「自分にできること」からアクションを起こすことが大事

というように、鉄道の街として栄え、そして、天北線の廃線とともに過疎化が進んできた音威子府村にとって、一方的に要望するだけでなく、住民自ら鉄道の必要性を考えてみましょう、そして、できることからやっていきましょう、という論調でした。

これまでの北海道の沿線自治体の反応を見ていると、「廃止は受け入れられない」「費用負担は受け入れられない」と一方的に拒否するところも見受けられます。それでは協議や交渉にならないので、この音威子府村のように、「本当に鉄道は必要か?」を考えることで、「必要なのであれば、なぜ必要か?」、あるいは、「必要でないなら(廃止もやむなしなら)その代替策はどうすべきか?」といった議論ができるのだと思います。

「沿線の急速な過疎化」と「都市間輸送・国策路線としての重要性」のバランス

宗谷本線は旭川~稚内を結ぶ路線ですが、途中の名寄(なよろ)で列車の本数が大きく変わります。旭川~名寄間は、普通列車・快速列車が1~2時間に1本走っていますが、名寄から稚内へ行こうとすると、1日に普通列車2本、特急列車3本しかありません。

その名寄~稚内間ですが、今後の協議を難しくする要因として、

  • 沿線の急速な仮想化
  • 都市間輸送・国策路線としての重要性

のバランスをどうとっていくのか、というところがあるかと思います。

沿線の旧痩躯な仮想化

名寄~稚内の沿線では、急速な過疎化が進んでいます。2015年の国勢調査の結果を抜き出してみました。

市町村 人口(2015年) 2010年比
旭川市 339,605人 -2.2%
名寄市 29,048人 -5.0%
美深町 4,659人 -10.0%
音威子府村 832人 -16.4%
中川町 1,767人 -7.3%
天塩町 3,243人 -14.2%
幌延町 2,447人 -8.6%
豊富町 4,054人 -7.4%
稚内市 36,380人 -8.1%

(出典)平成27年国勢調査 人口等基本集計結果 | 総合政策部情報統計局統計課

これを見ると、たった5年間で1割以上も人口が減少しているのです。音威子府村に至っては16.4%減。音威子府村のホームページによると、2017年7月末現在の人口は782人だそうで、ここ2年ほどでさらに50人(-6%)減となっています。

日本の人口が減少に転じたと騒がれていましたが、地方では5年で1割も人口が減っているのです。これは、ちょっと衝撃的な数字だと思います。正直、宗谷本線がどうとかではなく、自治体が存続できるかというところまで来ているような気もしますが、本記事の論点から外れるので、ここではこれ以上触れないことにしておきます。

都市間輸送と国策路線

沿線人口を見てもう一つ気づくのが、宗谷本線は、旭川~名寄~稚内の都市間輸送のための鉄道であるということです。旭川市は道内第二の人口を誇る大都市ですし、名寄市、稚内市も人口3万人級の中規模な都市です。一方、それ以外の沿線の自治体は、人口数千人以下です。

また、2017年2月に北海道の作業部会がまとめた「将来を見据えた北海道の鉄道網のあり方について」という報告書で、北海道内の路線を6つの類型に区分して議論するとしていますが、宗谷本線は、

3.国境周辺・北方領土隣接地域の路線

に該当すると思われます。この報告書では、

ロシア国境に近接する宗谷地域については、我が国の領海、排他的経済水域等の保全に重要な役割を果たしている特定有人国境離島地域(利尻、礼文)を有し、産業の振興や生活条件の改善を通じて定住の確保等を図ることが不可欠であり、今後のロシア極東地域と本道とのさらなる交流拡大の可能性を踏まえ、引き続き鉄路の維持を図る必要がある。

とされていて、重要度の高い路線と位置付けられています。

(出典)将来を見据えた北海道の鉄道網のあり方について(要約版), 平成29年2月7日, PDFファイル

沿線自治体の費用負担は困難、「上下分離で国・道が設備保有」が唯一の解か?

沿線自治体は過疎化が急速に進み、費用負担はおそらく困難でしょう。その一方で、札幌・旭川と稚内の都市間輸送の重要性や、国境に隣接する宗谷地域の領海等の保全に重要な路線という位置づけから「引き続き鉄路の維持を図る必要がある」とまで明記されていることから、何らかの方法で路線の維持を図る方向に進むことも考えられます。

こう考えていくと、国や北海道が費用を負担して線路等の設備を保有し、JR北海道はその設備を(極めて安い費用で)借り受けて列車を走らせる、いわゆる「上下分離方式」しか解がないように思います。そもそも、国道や道道(県道)は、国や北海道が費用を出して管理・維持しているわけですから、そのスキームを鉄道に適用するだけだとも言えます。

4月に開催された会合では、沿線自治体に加えて、北海道や北海道運輸局がオブザーバーとして参加したとのことですから、今後は、宗谷本線の維持に向けて、北海道がどのように支援していくのか、あるいは国に支援を頼むのかがポイントになりそうです。

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以上、宗谷本線の路線維持に向けた話題でした。JR北海道の「単独で維持困難な線区」については、路線ごとにかなり事情が異なることが見えてきました。今後も、協議の動向を見守っていきたいと思います。