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日高本線の代替交通の初期費用と収支の予測を報告、BRTやDMVは50~100億円超と非現実的、バス転換に傾くか?

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2015年の高波被害の影響で一部運休となっているJR北海道の日高本線。今回、代替交通の初期費用と単年度収支に関する予測が報告され、BRT導入の初期費用が100億円以上、DMVも50億円弱と、かなり高額の費用が必要であることがわかりました。

鉄道廃止後の代替交通の初期費用・単年度収支を調査

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日高本線の鵡川~様似間は、2015年の高波被害により不通となっており、JR北海道が路線廃止、バス転換を提案しました。それを受け、沿線自治体でつくる「JR日高線沿線地域の公共交通に関する調査・検討協議会」が、代替交通の案として、BRT、DMV、バス転換(乗り合いバス)の三つを想定し、協議を続けてきました。

www.kzlifelog.com

代替交通の三つの案の内容は以下の通りです。

  • BRT(バス高速輸送システム): 鵡川~様似の鉄道を廃止し、跡地をバス専用道路として整備して一般道も含めてバスを走らせる案
  • DMV(デュアル・モード・ビークル): マイクロバスをベースに、鉄道と道路の両方を走れる車両を製作し、被害を受けていない区間では鉄道として走らせる案(被害を受けた区間は廃止し、DMVは道路を走る)
  • 乗り合いバス: 鉄道を全区間で廃止し、一般道を走るバスに転換する案

今回、コンサルタント会社に調査を依頼した代替交通の初期費用・単年度収支についての報告がなされました。

www.tomamin.co.jp

BRTは100億円超、DMVも50億円近くの初期投資が必要

報告書自体はまだ公開されていないので、上記の苫小牧民報の記事から数値を抜粋してまとめてみました。

代替交通案 初期費用 単年度収支 運行開始までの期間
BRT 105.7億円 △5.2億円 6年以上
DMV 47.1億円 △9.5億円 14年以上
乗り合いバス 2.6億円 △1.8億円 2年程度

BRT, DMVの初期費用は非現実的

まあ、予想した通りというか、BRTとDMVは現実的ではなさそうですね。

BRTは、廃止区間の線路をはがしてバス専用道を整備する必要があり、それに93億円以上もかかるそうです。DMVがその半分くらいで済んでいるのは、被害を受けていない区間の線路はそのまま利用し、廃止区間は一般道を走る前提だからでしょう。

ただし、単年度収支の赤字額はDMVが最も大きい予想になっています。道路と線路の維持費の差に加えて、DMVという特殊な車両のメンテナンス費用も大きいのではないかと想像します。

運行開始までの期間も問題

もっと大きな問題は、運行開始までに長い年月を要することです。特に、DMVに至っては、車両開発・製作に合わせて10年以上、運行開始まで14年以上と試算されています。

14年も経ってしまえば、過疎化や人口減少で周囲の状況も変わっているでしょう。さらに、14年間無くても何とかなるものであれば、将来的にも必要ないのでは、という議論が起こりそうですね。

地元民の足としてはバス転換が現実的か?

巨額な初期投資や、大きな単年度収支を受け入れてまで、BRTやDMVを整備する必要があるのかを考える必要がありそうです。

新たに道路を造るBRTはメリットなし?

BRTを導入するメリットは、バス専用道を整備することで、一般道の渋滞の影響を受けず、鉄道並みに定時性の高い交通を実現できるところにあります。実際、東日本大震災で壊滅的な被害を受けたJR東日本の気仙沼線・大船渡線の一部区間にBRTを導入しています。

ところが、北海道のこの区間は、渋滞が発生するようなところではありません。それに、日高本線の大半の区間は、国道235号線(浦河国道)が並行しています。さらに、少し内陸側になりますが、ほぼ国道235号線と並行する形で、「日高自動車道」の建設が進んでおり、一部区間はすでに開通しています。

日高自動車道 |室蘭開発建設部

これだけ道路のインフラが整っているのであれば、初期費用に100億円超、毎年5億円の赤字を負担してまで、BRTを導入するメリットは全くないと思えます。

観光用のDMVの可能性は?

一方のDMVについては、マイクロバスがベースとなるため、乗り合いバスよりも輸送力が小さいという課題がありますし、鉄道と違って車体が軽いので、積雪に弱い(雪に乗り上げてしまう)という欠点もあります。

あえてDMVを導入するというのであれば、おそらく観光用でしょう。日高本線は海のすぐ近く、波をかぶりそうなところを通っているので、その景観をウリにした観光鉄道としてDMVを走らせるのはありかもしれません。ただ、そのような海に近い区間は、高波の被害で運休、廃止されてしまうので、こちらもなかなか難しそうです。

沿線住民にとってはバスの利便性が一番かも?

結局、コスト面と利便性の両面を考えると、乗り合いバスのメリットが大きそうです。特に、沿線住民の足としての利便性を考えるのであればなおさらです。

BRTやDMVの単年度収支は赤字額が大きく、いずれ費用負担が重荷になって廃止されてしまう恐れもあります。地域のインフラとしての交通を考えるのであれば、将来に渡って維持できる継続性の面も重要です。乗り合いバスでも単年度収支は赤字の予測になっていますが、BRTやDMVに比べて赤字額が小さい分、費用負担は軽いはずです。

JR北海道「単独で維持困難な線区」協議への影響は?

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この日高本線の鵡川~様似間は、高波被害で大きなダメージを受けてしまったということもあり、JR北海道が1年前に公表した「単独で維持困難な線区」の協議に比べると、代替交通の具体案を出して、その費用を調査するなど、かなり協議が進んでいると思います。

となると、気になるのは、これからこのような協議が始まると思われる、他の「単独で維持困難な線区」への影響です。

もちろん、路線の特徴によって、一概には言えないのですが、

  • かなり長距離の盲腸線(終点で他の路線に接続していない路線)
  • 都市間輸送の役割よりも沿線住民の足(生活路線)としての性格が強い路線

といった特徴を考えると、根室本線の釧路~根室間や、札沼線の北海道医療大学~新十津川間などが似た性格を持った線区になりそうです。

個人的には、今回の初期費用・収支の予測が出たことにより、日高本線 鵡川~様似間はバス転換に傾くのではないかと思っていますが、これまでの議論の経緯や、最終的にどのような結論を出すのかなど、上記のような単独で維持困難な線区の協議に与える影響が大きいのではないかと思います。


以上、日高本線の代替交通の初期費用と単年度収支に予測についての話題でした。この区間、陸側には、日本一の競走馬の産地としての牧場ののどかな風景が広がり、海側には断崖絶壁すれすれを走るスリルのある車窓が楽しめる、乗り鉄にはおすすめの路線です。その路線がなくなってしまうのは悲しいですが、廃止と決めたのであれば、沿線住民にとって利便性が高く、将来世代に負担を残さないような方向で決着してほしいと思います。